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第五章・3

 今夜は、キャンピングカーでお泊りだ。  僕は一晩中寝ない、と宣言していた彩人だったが、夕食を摂りシャワーを浴びると、とろとろと眠り始めた。 「彩人くん、徹夜でトランプするんじゃなかったのか?」 「するよ。僕が勝つまで、する……」  ついに寝落ちてしまった彩人を抱いて、研悟はバンクベッドへ運んだ。  ダブルベッドサイズの、広い空間だ。 「すみません、研悟さん」 「心路さん、ここで彩人くんと寝ますか? 僕はもう一つ横のダイネットで構いませんが」 「いえ、あの。よかったら、ここで三人で、では狭いですか?」 「構いませんけど?」  どうして? との気持ちを語尾に含ませた研悟に、心路は思いきって言ってみた。 「三人で、川の字になって眠りたいな、って思って」  研悟は舞い上がった。 「ぜひ! ぜひお願いします!」  眠ることが、こんなにワクワクすることだなんて!  それから……。 (パジャマ姿の心路さん。なんて美しいんだ)  これはいつか絵に描きたい、と心にとめて、研悟は新しいシャツとチノパンに着替えて彩人の隣へ横になった。 「研悟さんは、パジャマに着替えないんですか?」 「誰か一人は、何かあった時にすぐ動けるようにしておかないと」 「ありがとうございます」 「いえ、御礼なんか」  付き合っているといいながらも、どこかかしこまったところの抜けない二人だ。  お互いそれは解っているのに、あと一歩が踏み出せない。  明かりを落とし、二人は腹の探り合いを始めた。

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