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第五章・4
「研悟さん、まだ起きてますか?」
「起きてますよ」
わずかな沈黙のあと、心路はもそりと動いた。
「彩人、よく眠ってます」
「日中、よく動きましたからね。絵もすごいのが描けましたし」
しばしの沈黙の後、研悟はごそりと動いた。
「心路さんは、楽しめましたか?」
「ええ、とっても。なぜです?」
「いつも僕が引っ張りまわしてますから。返って迷惑でないといいんですが」
「迷惑だなんて。そんなことありません」
「ありがとう」
再び沈黙が流れ、一向に進展しない自分に、二人はついに強硬手段に出た。
「あの」
「心路さん」
同時に声が重なり、また引っ込んでしまう。
しかし、隙をついて素早く動いたのは心路だった。
「そちらへ行っても、いいですか?」
積極的な心路に、研悟の胸は高鳴った。
「ど、どうぞ」
彩人を起こさないようにそっとまたいで、心路は研悟の隣へ滑り込んだ。
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