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第五章・6

 キスだけのつもりだった心路だが、身体が火照ってたまらなくなっていた。  もう、二年もセックスをしていない。  熱い研悟の口づけは、心路の体内にくすぶっていた炎を呼び覚ました。  今度は、心路が研悟の手を取った。  そしてパジャマのボタンをはずすと、その手のひらを自らの胸にいざなった。 「心路さん」  研悟の手のひらは、心路の左胸に当てられている。  心臓の鼓動が、速く激しく打っている。  研悟は腹をくくると、キスを終えた唇を心路の首筋に移した。  ひくん、と身体を震わせる心路が健気だ。 (彩人くん、頼むから起きないでくれよ)  そろそろと暗がりの中、研悟の唇は下へ下へと降りて行く。  そして、胸の小さな粒をとらえた時、心路はこらえきれずに小さな声を立てた。 「んッ」  大丈夫。  これくらいで目を覚ますような、彩人くんじゃない。  今まで付き合ってきたのは、心路だけではない。  彩人ともまた、研悟は深く関わってきたのだ。  彼がいったん眠りに就けば、よほどのことが無い限り起き出すことはない、と知っていた。  そうと決まれば。  研悟は、可愛らしい胸の乳首を甘噛みし、ちゅっと吸った。 「ぁんッ!」  控え目だが、充分艶のある心路の声だ。  熱い、大人の夜が始まった。

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