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第六章・6
彩人の絵は、描く毎に変化していった。
始めの頃は、花や木などをただの円で表現していたが、次第に指で強弱をつけて細部までこだわるようになった。
花は、花弁の線を柔らかく。
葉は、多彩な緑で表した。
そしてその周囲には、昆虫や鳥、魚や動物が加わるようになった。
どんどん彩を増してゆく、彩人の絵画。
劇的に変わったのは、そこに人物が描かれるようになったことだ。
始めは、彩人自身。
そして、彩人と心路。
最後に研悟が加わって、まるで家族のような姿を絵に映し出した。
指先でのびやかに描かれたそれは、観る人全てを幸せにしてくれるような、魔法のような作品だった。
「彩人くん、僕も描いてくれたんだな」
「だって先生は、パパの恋人になったから」
え、と研悟は見る間に赤くなった。
キャンピングカーで、身も心も結ばれた二人だ。
夢のようなひとときは、まだ鮮やかなまま胸に宿っている。
(今度はいつ、心路さんと……)
「研悟先生、何ニヤニヤしてるの?」
「え!? いや、その、つまり!」
研悟は妄想を正し、彩人に真面目な話を振った。
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