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第七章 決意
研悟さんと、結婚したい。
そこまで彼を想うようになった心路。
しかし、それには越えなければならない壁がある。
「離婚、しなきゃ」
新しい恋人の元へ走って、2年間も音沙汰のないパートナー・凌也。
まずは彼に、離婚届へ判を押してもらわねばならない。
心路は、震える指先でタップし、凌也に電話を掛けた。
出ない。
「やっぱり出ない、か」
これまでも、何度も電話した。
だが、一度も彼が応答したことはないのだ。
それでも、心路は辛抱強く何度も電話を掛けなおした。
3回、5回、10回。
11回目に、ようやく不機嫌そうな声が心路の耳に届いた。
「何だよ、しつこいな。あのガキでも死んだか?」
なんてひどいことを!
一瞬にして心路の気持ちは乱れたが、そこをぐっとこらえてできるだけ冷静な声を絞り出した。
「お願いがあります」
「お願い? ようやく素直に、俺に帰ってきて欲しい、って思ったのか?」
「違います」
「じゃあ、何だよ。金なら出さないぞ」
「離婚して欲しいんです」
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