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第七章・4

 今日は外ではなく、アトリエで絵を描いている彩人だ。  つまんないから、と通っていなかった学校にも行くようになり、友達もできた。  図工の時間は担任の先生にいっぱい褒めてもらえるので、大好きだ。  苦手だった給食も、残さず食べることができるようになった。  そんな彩人だったから、他の人がいるアトリエでも無理なく絵を描けるようになっていた。  彩人が絵を描いている間、心路はその様子をにこにこと眺めているか、自分もデッサンなどやっているかのどちらかだ。  しかし今日は、研悟に頼んで応接室にいた。  出されたコーヒーが冷めてしまう頃、ようやくアトリエから研悟がやってきた。 「待たせたね」 「いいえ。私こそごめんなさい。生徒さんの指導があるのに、時間を割いてしまって」 「皆さん、自由に描くことも好きだから大丈夫だよ」  それで、とソファに掛けた研悟は身を乗り出した。 「話って、何かな」 「実はお願いがあって。今度の金曜日、彩人を一晩預かって欲しいんです」 「お安い御用だけど。……どうして?」 「私のパートナーが、訪ねて来るんです」  その言葉に、研悟は顔を引き締めた。

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