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第八章・2

「先生のお腹、なんで段々になってるの」 「腹筋だよ。絵を描いたり彫塑をしたりするには、力仕事もいるからね。鍛えてる」 「触ってもいい?」 「いいけど、まずはお風呂に入ろう。風邪をひくぞ」  髪を洗ったり、シャボンで体を泡だらけにしたりしながら、彩人は楽しくバスタイムを過ごした。  バスタブに二人で浸かると、湯が勢いよくあふれ出し、それも彩人を喜ばせた。 「すごい。パパとお風呂に入るのと、全然違う」 「そのパパのことなんだけど」  研悟は、声を潜めて彩人に持ち掛けた。 「危険が迫っている。心路さんに」  その言葉に、彩人は顔つきを引き締めた。 「何で?」 「今度の金曜日、彩人くんのお父さんが心路さんに会いに来る」  彩人の顔色が、さっと変わった。 「ダメだよ、そんなの。あいつ、いつもパパをいじめてたんだ」 「そうか、やっぱりダメなのか」  実の子に『あいつ』呼ばわりされるようでは、凌也はすでに終わっている。  研悟は心置きなく、彼をこの家庭から追放しようと決めた。 「それで、彩人くんに頼みがあるんだけど」 「パパをあいつから守るためなら、なんでもするよ」 「よく言った。じゃあ、金曜日に……」  二人は、心路の知らない間に、秘密の計画を練り上げた。

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