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第八章・3
お昼寝をしなかった彩人は、バスから出ると早々に眠ってしまった。
研悟はそんな彼を抱きかかえ、心路と話しながら二階へ上がった。
「二階に寝室があるんだ。リビングやキッチン、書斎も」
一階は、主にアトリエと応接室がある。
お茶の用意をするための、小さなキッチンも。
「そしてここが、寝室」
ドアを開くと、そこには大きなベッドが二つ据えてあった。
「ベッドが、二つ?」
「おかしいだろう? いつか誰かにここで眠って欲しくて、二つ用意してしまったんだ」
奥のベッドに彩人をそっと横たえると、研悟は羽毛布団を掛けてやった。
夏でもさらりと涼しい、ダウンケットだ。
そこで心路に向き直った研悟は、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「ベッドはあと一つだけど、あの。よかったら……」
心路は全部言わせないように、爪立ちして研悟にキスをした。
「一緒に、寝てくださいますか?」
「も、もちろん」
パジャマ姿の二人は、広いベッドに横になった。
どうせ、すぐに脱いでしまうのだが。
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