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第九章・5

「お巡りさん、こっちです! 男が、研悟先生に乱暴してるんです!」 「彩人!?」  心路は、突如家へ駆け込んで来た息子に驚いた。  そして、その後には警官が二人続いて上がって来る。  まさに、凌也のアッパーが研悟の顎をとらえた瞬間だった。  ヒトには、どうやっても鍛えられない急所がある。  顎は、その一つだ。  顎を打たれ、脳を揺さぶられた研悟は、とうとう床に膝をついた。 「どうだ、思い知ったか!」  嬉々とした凌也だったが、その腕は警官の手によって押さえ込まれた。 「君、ちょっと。この人と、どういう関係ですか?」 「見たところ、一方的に殴っていたみたいだけど」  突然のことに、凌也は慌てた。 (警官? いつの間に!?)  彩人が、研悟にすがりついている。 「研悟先生、大丈夫!?」 「ああ、痛いな。骨が折れたかもしれないな」  心路、救急車を呼んでくれないか。  そこでようやく、凌也はこのしたたかな男の策略にはめられたのだと気づいた。  わざと一方的に殴られておいて、俺を傷害事件の加害者に仕立て上げたんだ! 「研悟! てめえ!」 「静かにしなさい」 「言いたいことがあったら、署で聞きます」  凌也は、警官に連行されていった。

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