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第十章 花、ひらく。
「秋は焼き芋だよなぁ」
研悟と彩人は、庭の落ち葉を焚いて、芋を焼いていた。
もういいかな? とくすぶる落ち葉の中からアルミホイルに包まれた芋を火ばさみで取り出した。
「彩人、熱いから気を付けて」
「平気だよ。軍手してるから」
彩人はすっかり研悟と打ち解け、懐いていた。
芋を手に、心路を見上げてにっこり笑う。
この庭を始めて歩いた時とは別人のような、彩人の表情だ。
「はい、心路にも。焼き芋をどうぞ」
「ありがとう、研悟さん」
幸せそうな姿を見て、彩人はじれったそうに言った。
「ねえ、二人はいつ結婚するの?」
「え!?」
「いや、あの、その」
参ったな、と頭を掻く研悟とは違い、心路は少しうつむき加減で。しかし、ハッキリと口にした。
「研悟さん、絵画コンクールの結果、間もなくでしたよね」
「うん、来週」
「もし彩人の絵が入賞したら、……結婚を前提としたお付き合いをしていただけませんか?」
研悟は、手にした芋を取り落としていた。
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