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ティファニーで朝食を

吉木はティファニーに来ていた。 ショーウィンドーを見て、なぜだか今日はここでダイヤモンドを買わねばならない気がしたのだ。きっとこれが、自分の今の正直な気持ちなのだと今なら思える。 店員に、ダイヤの指輪を見せるようにお願いをする。できれば大きいものがいい。値段はいくらでもよかった。奥から出してきたのは2カラットのダイヤの指輪だ。正方形に近いカットが施されている。店員はエンゲージメントリングだと言った。 皮肉なものだ。 To Engage in prostitution と使えば、売春に従事すると言う意味になる。それもまた俺と和樹の金で繋がる関係には似合っているのかもしれない。それをもらうことにした。指輪のサイズは?と聞かれたが、そんなものわからない。おそらく標準的だろうと思い一番出るのはどのサイズか聞いて、その時店に置いてあるものをとりあえず買った。 サイズがもし合わなくても、鑑定書を持ってくれば、サイズのお直しはしてくれるだろう。 あのティファニーブルーの紙袋に入れてもらい、その足で和樹の勤める店に予約の電話をした。 予約はその日の夜20時に取れた。 いつもの指定されたホテルに行く。 時間通り、ドアがノックされた。 「よし君、今日の私も、き・・・」 まで和樹が言いかけた時に、和樹は言うのをやめた。 何かを悟ったようだった。 「今日は素顔のままでいよう」 吉木はそう一言言った。 和樹も、うんと頷いただけだった。 和樹と吉木は、服を着たままベッドに寝転んだ。 「よし君、ついに見つけたね。肝臓あげてもいいと思える人」 「うん。もう素直になることにしたよ」 「そうだね。僕はクリスマスから気がついてた」 「そうか・・・。和樹には隠せないな・・・」 「最後に、今日は何もせずに、一緒に朝まで寝よう。もちろん服を着たまま。何も演技しなくていい。最後に素顔の和樹で過ごしてくれたらいい。俺も、もう演技はしない」 そう告げると、和樹はまたコクリとうなずく。 そのまま、服を着たまま和樹と抱き合って眠った。 こんなにゆっくり寝たのはいつ以来だろう? そう思えるくらいぐっすり寝た。 明け方和樹は一人でベッドで目が覚めた。 隣にいるはずの吉木はいない。 店に電話をすると会計も済ませてさっき部屋を出たと知らされた。 部屋を見回す。 ベッドの上に、あのティファニーブルーの箱がメッセージカードとともに置かれていた。 箱を開けてみる。 そこには大きなダイヤがついた指輪が一つ。 メッセージカードを開いてみる。 ”君が好きなものだといいのだけれど・・・。 君に肝臓はあげれないけど、これが僕からの最初で最後のプレゼント。 僕の渇いた心を飾ってくれた和樹へ。心を込めて送ります。 清水芳樹 和樹はその指輪を見て、店を辞めようと思った。 そして、ぽつり呟くのだった。 ティファニーで朝食を・・・もう一度一緒に見たかったな・・・

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