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第3話

魔神を宿さなくなったとしても、ギレンにはタイラが魔神を上回る魔力量を有していることは分かっていた。 しかし、使い方には首を傾げるしかない。 奴隷を買えば、掃除など毎日してくれるだろうに、魔法ですべて清掃を一瞬でこなしていく。 これまで、このような魔法の使い方をしているニンゲンは見たことがなかった。 「奴隷はもたない主義だけど、ギレンはリカール伯とか王様とかを説得するために奴隷として手に入れたけど、別に働かなくていいよ。ここで好きに暮らしてよ」 そう告げるとタイラはギレンに近づいて、腕にかかっている拘束具である腕輪を外した。 「馬鹿なのか?オレは逃げるぞ」 と、玄関の扉を開いてギレンは駆け出した。 こいつの脳みそヤバすぎだろ。 勇者様のくせに、どこかおかし過ぎるだろ。 門を出ようとすると、電撃のようなものに弾かれて、ギレンは吹き飛んだ。 「言い忘れたけど、泥棒よけの結界はってあるから。って、……遅かったか」 衝撃で目を回して気絶しているギレンを見て、玄関から出てくると血がづいて、軽く息をついて抱き上げる。 「奴隷の契約結んでいるのだから、逃げても居場所はすぐにわかるよ。悪いことしないっていうなら、そのうちに自由にしたいけどね。でも、アルビノは目立つかなあ」 少し考え込んでから、あっと声をあげていいことを思いついたかのように、そうしようと呟いて、邸宅の中に入っていった。 魔神と契約したのは15歳の時だった。 家族全てを生贄として殺されて、15歳になったら自分の番だと言われていたから、その前に逃げ出した。 追手と戦っていたが、自分の力ではどうにもならなくて、ただ逃げたくて禁呪を使い魔神に縋った。 世界を征服なんてする気はなかった。ただ、逃げたかっただけだ。生きたかっただけだ。 ギレンが目を覚ますと、狭い部屋の中のようだった。 体にかかる布団はとても柔らかく、また身につけている服も肌触りが良い。 さっきの邸宅にこんな狭い部屋があるのかと首を捻って見渡すと、タイラの背中が見えた。 タイラが向かっている四角い額縁の中の絵は、見たことがないくらい鮮明で、実際の人物や景色を映しとったかのようで、そして、それは動いている。 「な、なんだ」 「あ、ギレン。起きた?」 タイラは振り返って、立ち上がるとベッドに寝ているギレンに近づく。 着ている服は、貴族の服のような素材だが、見たことのないような形をしている。 「こっちでは魔法使えないからさ、掃除するので疲れちゃったよ。さて、美容院とコンタクトを買いにいくよ」 不審に思う間もなく、ギレンは腕を引かれてベッドから降りる。 肌触りのよい服は、タイラの着ているものと同じようだった。 「ど、どこに?っ、てか、フード被らないと村人が恐慌状態になるぞ」 「大丈夫。ここは、僕の故郷だから。アルビノは珍しいけど、差別はされない」 にっこり笑うと、タイラはマンションの玄関を開いて、ギレンを連れて外に出た。

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