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第4話

確かに外に出ても、魔術を使うためのマナと呼ばれる原力は感じられなく、ギレンはタイラが別の世界という意味を理解した。 見たことのない塔が、周り一帯に建ち並び、まるで祭りの日のような黒々と人々がゾロゾロと歩いている。 これまで生きていてフード無しで歩いていれば、石や物を投げられたり、悪くすれば切りつけられたのに、歩く人々はギレンの髪や目の色にまったく無関心で、たまに向けられる視線も悪意とかでは無かった。 「人が多いだろ。新宿は、こんなもんだよ」 「ああ。……オマエ故郷では言ってた通り、いろなしでも、気にしないのだな。視線は感じるが」 キョロキョロと周りを気にしなながら歩くギレンの様子に、タイラは面白がるような表情を浮かべて、頷いた。 「まあ、ギレンは背が高いし、イケメンだからね。オーラもあるから、外国のモデルか何かだと思われてるのかも」 にこやかな表情でタイラは答えを返すが、ギレンには理解の出来ない言葉ばかりである。 ビルの隅の美容室の中に扉を開いて入ると、戸惑うギレンを引っ張り込む。 「こんにちは、マリーさん急に予約とってくれてありがとうございます」 奥からカウンターの方にハサミを手にしている背の高いごつめの男性が、タイラを見ると駆け寄ってくる。 「んっもう、マー君たらっ、半年も何してたのよう。アタシ、お店に何度もいったのよう」 おねえ丸出しの話し方で、タイラに向けてくねくねと腰を揺らしている。 「マリーさんを心配させてしまいましたか。少し仕事に疲れてしまって、海外で、ヒッチハイクの旅をしていたのです」 「そうよね。ホストは疲れるものね。少し休養が必要よね。今日は、カラーとカットって話だけど……」 「あ、僕ではなくて、彼、海外で知り合った友達で、ギレン君というのだけど、カラーと少し整えてもらえないかなって」 「まあっ、カッコいい子。お店に入れるの?アルビノは珍しいから、目立つものね」 ギレンを眺めながら、何色がいいのかしらと問いかける。 「この男は何を言っているんだ。動きが気持ち悪いな」 ギレンは、眉を寄せて不機嫌そうに吐き捨てる。 「マリーさんは、身体は男性だけど心は女性なんだよ。髪の色を変えるのだけど、何色がいいか聞いているんだ。僕は赤茶が似合うと思うけど」 「髪の色が変えられるのか……神業だな。別にオレは何色がいいとかわからない」 首を横に振るギレンに、じゃあ任せてとタイラは告げて、 「マリーさん、ボルドーにしてくれる?髪型はおまかせにする。彼、日本語話せないんだ」 「外国語を話すマー君は知的でカッコいいわね。いいわ。ボルドーのマッシュにしようかしらね」 マリーは、ギレンを美容台の方に連れて行き、仕事にかかった。

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