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第9話
ギレンは果てしなく落ち込んでいた。
性奴隷の契約を結ばされた時から覚悟は出来ていたが、相手を誘う羽目になるとは考えてはいなかった。そもそも綺麗な顔をしていて、相手には不自由ないのは分かりきっていたから、嫌がらせのための契約だと信じていた。
しかし、タイラの様子を見れば、その契約内容自体分かってないようだ。
隣で軽い寝息をたてて眠っているタイラを眺めてギレンはふうと息をついた。
使役していた魔神を殺されたのだから、自分にあるのは鍛えた肉体と、通常よりは強い魔力くらいのもので、勇者には対抗する術はない。
だけど、逃げ出せれば悪事を働いて生きのびるくらいの力はある。人間に害をなさないなんてありえない。
人間どもも馬鹿ではない。タイラがオレを生かす選択をした時に、性奴隷の契約と魔封じの腕輪をつけられた。魔封じの腕輪は、最悪腕を切ればいいが、契約をしていればタイラと離れることはできない。
生贄だった子供の頃は、わけもわからず捌け口として使われたことはあったが、逃げ出してから15年近くもそのような経験はなかった。
1ヶ月近く手を出さないのも、我慢出来なくなった自分を嘲笑するためなのだろうと考えて、必死に契約の履行を求める身体を抑えつけていたのに。
笑うことなんてせずに、まるで、女性でも扱うかのように丁寧に抱かれた。
性奴隷なんて道具でしかないというのにだ。
何がしたいのかサッパリわからない。
「........調子が狂う」
夜の方まで勇者すぎるだろう。
すんなり殺してはもらえないし、これからどうしたらいいのかと考えて、ギランは顔を顰めた。
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