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水曜日の恋人はいじわる⑮ JKコスプレして駅前をウロついていたら捕まった

「ご一緒しますよ。」 遼太と二人で映画デートのはずなのに、生徒会役員四人で映画鑑賞するコトになった。 ここは20年後か30年後に消滅するかもしれないと言われている県、県庁所在地の駅前なのに人影が少ない、日曜日の朝だからかもしれないが人が少なくて不安になる。 いやいや、底辺高校とはいえ生徒会長の男の俺がJKコスプレして駅前をウロついている方が日本の将来的に不安だろう、何のプレイだこれ? まあ、人がいないのは好都合、別に他人様に女装を見て貰いたいワケではないから、チェックのマフラーを鼻先までに上げて顔を隠し遼太の後ろに隠れてコソコソと歩く俺、映画館は駅ビルのにあるようで今日見る予定の看板がデカデカと貼られている。 ただでさえ早起きして眠いのに、駅に着いて早々に何故かトイレでセックスする流れになってしまい、疲れてクラクラするほど眠い、薄暗い映画館の中で寝てしまいそう、映画の始まりまで時間があり駅前を散策することに、歩いているとデートっぽく手を繋ごうとしてくる遼太、手を払いのけていると聞き覚えのある声が耳に入った。 「三田書記、おはようございます!、デートですか?、誰ですか?、誰ですか?、後ろにいる女の子は?」 遼太の後ろからヒョコッと伺うと副会長の加藤葉月が息を切らし興奮気味に問いかけている、その隣に迷惑そうな顔をしながら同じく息を切らしているヤツがいる、見覚えのある顔、気弱な風情でもリア充を意識した髪型、細身で神経質そうな雰囲気、切らした息を整えて顔を上げて分かった、生徒会会計の1年生男子だ、名前は藤丸雨水だった気がする。 底辺高校の生徒会関係者が過疎化激しい駅前に集結している。 そんなことより、生徒会長の俺がJKコスプレをしているコトがバレたら一生の恥!! 鼻先までに上げていたマフラーを目元まで上げて遼太の背中にくっついた、隠れる俺を副会長が覗き込んでくる、遼太の背中を叩き振り向かせて小声で言った。 「遼太、適当に「彼女だ」って言え、間違っても俺の名前を出すな!」 「彼女って言っていいのか?」 「JKコスプレしているヤツを連れて「彼女」以外の正しい答えがあるのか?」 「そうだな、「彼女」って言うぞ!」 セミみたいに遼太の後ろに張り付く俺、身が隠れて遼太がデカい男で良かったと初めて思った、男の俺を「彼女」と紹介するのはどうかと思うが仕方ない、背中に隠れる俺を後ろ手で触りながら明るい口調で遼太が言った。 「カトちゃん、この子は俺の彼女で、今日はデートしているんだな。」 「へぇ…、三田書記に特定の彼女さんが居られるとは、来るもの拒まずで最高八股までしていて、いつ誰に刺されるかを賭けの対象にされていた三田書記に特定の彼女さんが居られるとはビッグニュースですね、どんな可愛らしい方なのかご尊顔を拝見させていただけませんか?」 「はは、何言ってるんだカトちゃんはっ!、八股とかしていないぞ、全然してないからなっ!!、顔は見せられない、この子は恥ずかしがり屋さんでさ、顔を見せると死んじゃうタイプなんだ。」 「顔を見せると死ぬ…、奥ゆかしいタイプでしょうか?、まあ良いでしょう、映画に行かれるんでしょう?、ご一緒しても良いでしょうか?」 「一緒に?、嫌だな、二人で見たいんだよ。」 「ご一緒しますよ、映画館で風紀を乱す行動をされては底辺高校とは言え良くありませんしね。」 「フウキをミダス?」 「いかがわしいコトをするコトですよ。」 「それなら、さっきし…痛いっ!!」 遼太の後ろ脛を蹴り上げた、バカ遼太、何を口走ろうとしているんだっ! それよりも、ちょっと待て、副会長が重大なコトを言っていた、遼太が八股してて、いつ誰に刺されるかを賭けの対象になってたなんて本当か?、どういうローテーションで付き合っていたのだろうか?、一週間は七日しかないのに! まあ、モテる遼太が好きだから八股してても良いけど刺されるのは困る、死んでしまうのは困る、刺されない対策を考えてあげないといけない、バカだから刺されない対策をしっかり考えてやろう。 副会長も人が悪い、遼太の後ろでJKコスプレしているのは俺だって分かっているはず、日曜日に俺が映画へ行くコト話したのは副会長だけだから。 俺のストーカーと言ってたけど、何時から待ち伏せてたんだ? 電車が走っていない僻地と言われる地域から二時間かけて登校して来ている副会長、ここに辿り着くのには三時間以上は掛けているはず、会計の1年生男子も同じ地域の仲間なのだろうか、迷惑そうな顔でギンギンに俺を睨んできているのだけど、悪いのは副会長だ俺じゃない。 副会長が手を叩いて「彼女さんが嫌と言ってませんし、ご一緒良いですよね?」と明るい笑顔をしたら遼太の後ろに隠れる俺の手を握って強い力でグイグイと引き出された、ズレそうになるウィッグを押さえる俺、「見ないでくれ」と言いたいけど声を出すと男だとバレる、副会長はバレてるから良いとしても会計の1年生男子にバレるワケにいかない。 今日はポニーテールではなく髪を下している副会長、黒縁眼鏡の奥にある瞳は楽しくてしょうがないと言う風情、握られた手は何の躊躇いもなくガッツリとハマっていて振りほどくコトも出来ない圧を感じる。 「女の子同士だから、手を繋いでも良いですよね、彼女さん。」 「…、……、…………。」 何を考えているんだろう、この人は? 映画デートの邪魔をしに来たのだろうか? 女の子の手の割に柔らかくない、本当なら遼太と手を繋ぐはずなのにと遼太の方を見ると何故か会計の1年生と手を繋いでいる、その子は男だよね?、どういうノリをしているんだ遼太は? 手を引かれるままに連れ回されて、気づけば映画館の中、生徒会長の俺、右に書記の遼太、左に副会長、副会長の隣に会計、「生徒会役員が揃って見るほどの映画なのか?」という疑問の中で一般大衆向け娯楽アメリカ映画が始まろうとしている。

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