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第5章:First Sex

高校1年生の夏休みが終わり、 新しく買ったDVDを一緒に観ようと、 先輩の家に招待されたのは 二学期が始まってすぐの頃だった。 放課後、学校から5駅ほど先にある 先輩家の最寄り駅で待ち合わせをした。 学校から一緒に帰っても おかしくはない間柄だったが、 「付き合っている」俺たちは なんとなく警戒してたんだと思う。 先に駅に着いていた先輩は 通り過ぎる女子たちの視線を浴びていた。 名門と言われる高校のブレザーを着て、 高身長で、イケメンで・・・。 当たり前の光景だった。 コンビニの手前のコンクリートの柱の前で 参考書を読んでいる姿さえもが 絵になる先輩に駆け寄ると、 先輩は柔らかく微笑んで、 「行こうか。こっから5分くらいなんだ。」 と歩き始めた。 俺は、先輩のすぐ横にくっつくように歩いた。 「ここらへん来たことある?」 「いえ。うちは、学校から反対方向なんで。」 「ああ。クリニックの近くに住んでるのか。」 「はい。」 「そっか。ま、ここはさっきあったコンビニと 小さなスーパー以外何もないつまらないとこだよ。」 「でも、閑静でいいところですね。」 住宅がずらっと広がっている。 「まぁな。 あ、ここ、少し遠回りになるけど、入ってみる?」 そう言い、小さな通りを入って行った。 左右には木が生茂り、 横幅1m50cmほどの砂利道は 風で揺れ重なり合う葉の音すら聞こえそうなくらい静かだった。 「なんだかジブリみたいですね。」 「普段は通らないんだけど・・・、 なんか、ちょっとワクワクするだろ?」 その細い道を歩く、たった数秒間、 先輩は俺の手を繋いだ。 誰かに出会してしまうかもしれない緊張感と、 先輩とこうしていられる幸福感で、 脳内は忙しかった。 2分ほど遠回りをし、 8階建てのマンションについた。 セキュリティが厳重なエントランスを入り、 エレベーターで最上階へ。 焦げ茶色の大きな木目のドアを開けると、 生活感のあまり無い白い大理石の玄関があった。 奥のリビングルームらしきところまでは 長いフローリングの廊下で繋がっており その途中の玄関から一番近いところにある部屋へ案内された。 「ここが俺の部屋。」 黒家具で統一された部屋は、 とても綺麗に片付いていた。 入り口から見て右側にベッドがあり、 左側に、勉強机、テレビ台の上に小さなテレビ、 そして大きな本棚があった。 本棚には、参考書、問題集、そして たくさんの文庫本とDVDが並んでいた。 「適当に座って」 そう言われたので俺は躊躇《ためら》わず 一番心地良さそうなベッドの上に座った。 そんな能天気な俺に、 呆れたように 「警戒心ないなぁ。」 と先輩は言った。 そして、焦って床に座りなおそうとする俺を 可笑しそうに笑って、 「冗談だって。ベッドからが一番観やすいんだ。」 と言い、制服の上を脱ぎ始めた。 Tシャツ姿になった先輩は 机に置いてあった新品のDVDをパッケージから外し、 プレーヤーにセットした。 映画のオープニングが流れると、 先輩はベッドの上に飛び乗り、 壁側に背を向けるように寝転がった。 「ほら、ここ、おいで。」 先輩に言われるがまま、 横になると、背後から腕を回され、ロックオンされた。 先輩よりも小さい俺は すっぽりと 先輩の中に収まった。 「な?観やすいだろ?」 「はい。」 はっきり言って観やすいとか、 観にくいとか、 それどころではなかった。 「ドキドキしてるね。」 俺の体の中心で刻まれる鼓動が、 振動になって衣類の上からでも 俺を包み込む先輩に 伝わっているようだ。 「直に触れてもいい?」 俺はコクリと頷いた。 先輩は、後ろから 首元でしっかりと結んであるストライプのネクタイを緩めた。 そして、ワイシャツのボタンを 一つ、一つ、外し、 ズボンに入れていたシャツの裾を捲り、 するりと手を入れた。 心拍が、どんどん速くなっているのが 脈を触れていなくても分かる。 飛び出してしまいそうな心臓の上に ひんやりとした手が触れた瞬間、 体全体の毛穴が一気に目を覚ましたように、開いた気がした。 もう、映画どころではない。 「こっち向いて。顔が見たい。」 甘ったるいお願いに、恥ずかしくてたまらなかったが 従順に先輩の方に全身を向けた。 先輩は、なかなか目を合わせることが出来ない俺の顎を 右手でクイっと持ち上げた。 「尚って呼ぼうかな。いい?」 「・・・はい。」 「俺が好き?尚。」 「・・・はい。」 そのまま顔を近づけてキスをした。 触れた唇は温かくて、柔らかくて、 気持ち良くて、 俺は自分から何度も、くっつけたり、離したりした。 しばらく同じことを繰り返していると、 「これ、どうしよっか?」 と、先輩は、強張った下半身を 同じような状態の俺のに擦りつけた。 「見ていい?」 先輩は、俺のものを制服の上からそっと触れながら、聞いた。 俺が小さく頷くのを確認すると、 ゆっくりとズボンと下着を下げた。 「可愛い。」 「・・・小さいですか?」 「いや、そういうわけじゃ無いけど、 尚っぽいっていうか・・・。 今の尚の顔みたいにピンクで・・・ 可愛い形してる。」 自分では分からないものだ。 小学生の頃は、友達とふざけあって見せ合うこともあったが この年になると、そのようなこともしない。 ましてや、勃起したものなんて。 「・・・先輩のも・・・見たいです。」 「いいよ。」 先輩は躊躇せず、一気に下半身裸になった。 俺のを可愛いと言った理由が分かるような 長い脚の上に付いた立派なものは、 こちらを見るように硬く反り上がっていた。 「触ってみる?」 俺はまた小さく頷くと、 恐る恐る先輩のものに触れた。 自分のよりも 一回りほど太い先輩のものを 掌で隠すように握ると、 ピクッと先輩が身震いした。 「やば。」 先輩はそう言うと、 自分の手を俺の手の上にかぶせ、上下に動かした。 「こうやって、自分でやるみたいに、やって。」 途中で先輩は自分の手を離したので、 一人で続けた。 先輩は黙って俺の顔ばかり見ていた。 不安げな俺を察したのか、 「大丈夫、きもちいよ。」 と頭を撫でた。 そして、その手でブランと勃っていた俺のものを握った。 「あ、先輩・・・俺・・・」 他人に触られたことのないそれは 自分でするのとは全く別の初めての刺激に、 ひどく高揚した。 「・・・あぁン。先輩、あ、ダメ。モゥ・・・俺・・・」 一点に集められた快感は、 1分も経たぬうちに放出された。 「ごめんなさい・・・」 俺は恥ずかしくてたまらなかった。 呆れられたかもしれない、 と心配もした。 だけど、先輩は、 手をふいたティッシュペーパーを丸め ゴミ箱へ投げて笑った。 「好きな子をイかせて 喜ばない男なんていないだろ。」 「え、好き・・・って」 「え?」 「あ・・・。」 「ああ。そっか。好きだよ。ちゃんと。」 俺は、火照った顔を下に向けながら 「あの、俺も、先輩を・・・ちゃんと・・・イかせたいです。」 と訴えた。 すると、先輩は俺の様子を伺うように切り出した。 「男同士のセックスの仕方知ってる?」 「・・・え。男同士ってセックスできるんですか?」 「それでも、産婦人科の息子?」 先輩は可笑しそうに声を出して笑った。 俺がキョトンとすると 「アナルセックスすんだよ。」 と俺の尻の割れ目を すーっと人差し指でなぞった。 一瞬寒気がしたように 体が震えた。 「尚は、セックス自体したことある?」 「・・・いいえ。」 「だよな。」 「・・・先輩は?」 「まぁ・・・。男は初めてだけど。」 「・・・。」 「俺、尚とセックスしたいんだけど、尚は?」 俺は再び小さく頷いた。 怖く無いと言ったら嘘になる。 だけど、 先輩が好きで、好きで、どうしようもなくて、 それは紛れもない事実で、 心も体も先輩と繋がりたいと強く思った。 「ちょっと待ってて。」 先輩はクローゼットを開き、奥の方から 黒い靴箱を取り出した。 その中から、コンドームの箱と、 透明な液体がはいったボトルを出し、 「これ、買ったんだ。 どう使うかは、まぁ 想像はつくよな。」 と俺に尋ねた。 実を言うと その液体の正体も、 その使い方も、 俺は、あまり分からなかったが、 無知と思われたく無い一心で、 「はい」と答えた。 「えっと、ちょっと、ベトベトになるかもしれないから とりあえず服全部脱いでさ、 後ろ向いて、尻突き出せる?」 「・・・」 「・・・怖いよな。」 「・・・いいえ。大丈夫です。」 俺が服を脱いでいる間、先輩はボトルのキャップを開けていて、 人差し指にコンドームをつけていた。 俺はオドオドしながら先輩のいる方へ尻を向け、 肘と膝で体を浮かせた。 「なんかこの体勢エロいな。」 「・・・恥ずかしいです。」 「すごい興奮する。」 ビチャビチャと艶かしい音がして、 先輩は 「ちょっと触るね。」 と言った。 「ァ・・・。」 ヌルッとした冷えた液体が 少し気持ち悪い。 「痛かったらごめん。」 ゆっくりとその粘性のある液体と共に 硬い指が挿入されていくのを 感じる。 「ィた・・・。」 俺がそう声を漏らすと、心配そうに、 「大丈夫?」 と聞いて、第一関節まで入った指を抜いた。 「やめる?」 俺は首を横にふった。 「少ししたら気持ち良くなるみたいなんだ。」 先輩が言うなら、そうなのだろう。 「頑張れる?」 「・・・はい。」 「下半身の力抜いて。」 と言い、先輩はまたゆっくりと指を入れていった。 さっきよりは、痛みが軽減している気がした。 「どう?」 「ん・・・。なんか変な感じです。」 異物感がすごくて、ただただ痛い。 どうしたら良いのか分からず 無意識に入ってしまう力を、 意識的にを抜くことを繰り返した。 「めっちゃ俺の指に吸い付いてるよ。可愛い。 自分でどんどん奥に招き入れて・・・ ほら、全部入ったよ。 もう一本、いけそうだね。」 「え!?」 「頑張ろうか。」 先輩は入っていた指を抜くと、 グチョグチョのコンドームの中に中指も追加した。 「ゆっくり、いくよ。」 「ぁ・・・あアん。」 「もうちょっと奥に、入れるね?」 そう言うと、先の方だけ入っていた二本を 一気に奥へ指を突っ込んだ。 「あああああああああ。」 まさか裂けているのではないかと思うような激痛に、 体を除けようとすると、 「尚、ごめん。我慢して。」 と先輩は言い、 指を上下に動かした。 クチュクチュクチュと、 イヤらしい音が部屋の中で響き渡る。 「もう一本入れるね。」 「先輩、もう無理です。」 「大丈夫だよ。気持ちよくなるのは、ここからだよ。」 「でも。」 こんな痛くてたまらないものが 気持ちいわけがない。 でも、先輩の期待を裏切りたくない。 増えた先輩の指は俺の中で 何かを探るように、動いていた。 しばらく痛みに我慢していた俺だったが いきなりスイッチが入ったかのように、 快感が走った。 「ぁああアァん、先輩、な、な、、なんか、・・。」 先輩は、念願の宝物でも見つけたかのように 「ここか。」 と満足げに答えた。 先輩は同じ場所を押したり、擦ったりすると、 俺の萎えていたものが、また一気に勃った。 「気持ちい?」 「・・・ァ・・・ダメ、先輩・・・ぁああン。」 「ごめん、俺、もう耐えられない。」 そう言い、先輩は俺の尻から指を外した。 奥がなんだかムズムズする中 恥ずかしくてずっと下ばかりを見ていたが、 ゆっくりと視線を後ろに向けると、 先輩はまるで木刀のようなそれに 手慣れたように新しいコンドームをかぶせていた。 「尚、怖いかもしれないけど、 この体勢が、一番いいらしいんだ。」 恐ばる俺をなだめるように言った。 そして変わらず後背位の状態で、 さっきまで指を入れていた場所に 指3本なんかよりも、ずっと太くて大きなそれを押し当てた。 「・・・うまく入んないなー。 力抜いて。」 恐怖心と警戒心でどうしても歯を食いしばってしまう。 力を抜くと、少しずつ挿入されているのが 圧迫感と痛みで感じる。 本来出すところに、入れようとしているのだ、 本能的に体が縮こまり、また力が入ってしまう。 俺は、本能に逆らい、 また力を抜いた。 「そうそう。上手。ほら、先だけ、入ったよ。 ・・・このまま進もう。」 先輩のビクビクと脈立つ凶器が ゆっくりと、確実に、 俺の中の、奥の、 もっと深くに入っていった。 指で慣らしたとはいえ、 別次元の痛みに俺はただ耐えるしかなかった。 「動いてもいい?」 いちいち確認してくる先輩の優しさに残酷ささえ感じた。 そんな甘い要求に、俺がダメだなんて、言えるわけがない。 もし、ダメと言ったところで、 言いくるめられるんだろう。 「・・・大丈夫です。」 俺の言葉を聞いて安心したように先輩は、 ゆっくりと腰を動かした。 「こうしてれば少しは楽なんじゃない?」 途中で俺の萎えきったものをギュッと、握った。 腰の動きと同じ速度で、 上下に扱かれると、 少しずつ形を戻していく。 先輩の言うように焼けるような痛みは次第になくなっていった。 そして不思議なことに辛いものを食べた後、 またそれを欲するような感覚に陥った。 苦しみに耐える俺の声が、 快楽に喘ぐ声に変わっていったのを 先輩も感じ取ったのか、 先輩の腰の動きは 益々速くなっていった。 そして俺は再び先輩の手の中で射精した。 「俺も、イきそう。」 どんどん荒々しくなる息と共にそう言い、 パンパンパンと、何度か尻に股関節を 打ち付けるように腰を振ると、 「アァぁ・・・」 と大きなため息をつくような声を出し、 一気に気が抜けたように、先輩は俺の上に覆いかぶさり、 さっと、入っていたものを抜き取った。 麻痺しかけていた、俺の膝から下の脚は崩れ、 重たい痛みが、身体中を走った。 **** 俺たちは結構酔っ払っているんだろう。 櫻井先生はソファーで仰向けになる俺を まるでお姫様のように抱え上げ、 ベッドルームへと運んだ。 その足は千鳥足で、 俺は終始落とされるのではないかと不安になった。 部屋の真ん中に置かれた 綺麗にベッドメーキングされたベッドに転がされた俺は、 服を脱ぎ始める櫻井先生に 溢れる疑問をぶつけた。 「先生はなんでこんなこと・・・」 「・・・尚がつい可愛くって。」 そう言って、上半身裸になった先生は、 俺の上に被さり、キスをした。 「・・・ったくせに。」 「ん?」 この言葉を言ったら、 ムードも何もかもぶち壊してしまうことを分かっていながら、 言わずにはいられなかった。 「俺を振ったくせに、よくそんなこと言えますね。」 先生は、今にも泣きそうになり震える俺を、 宥めるように、俺の頭を腕で抱えてた。 「・・・あの時はあの判断が一番正しいと思ったんだ。 尚も納得したと思ってた。」 一方的に振られて、納得なんて、した覚えは無い。 「今日は寝ようか。まずシャワー浴びるだろ? そしたらゲストルームに案内するよ。」 「・・・。」 今なら、 この勢いで 別れた理由を聞けるのではないか。 そう思いながらも、 理由を聞くのが怖い自分もいる。 正直今の櫻井先生との関係が好きだ。 もしかしたら、このまま、また付き合うことだって・・・。 そして多分それを俺は望んでいる。 なんだかんだ、ずっと忘れられなかった。 櫻井先生以上に、 櫻井先生以外に、 こんなに惹かれる人は この13年、現れなかった。 再会して、 一瞬にして、 こんなに心を奪われるなんて、 こんなに体を許してしまうなんて。 もうこれは、 自分でも認めざる得ない。 心も、体も、櫻井先生を求めている。 俺は、櫻井先生が・・・好きなんだ。 そう自覚したらいてもたってもいられなくなった。 「櫻井先生、待ってください。」 俺の元から離れようとする先生を必死に止めた。 「俺・・・先生のこと・・・」 しかし先生は、俺の次の言葉を察したように、 「言うな。」 と背を向けた。 「先生・・・?」 俺は、先生の背中にそっと触れた。 ガッチリとした大きな背中。 追いかけていた、好きだった背中。 抱かれたたびに腕をまわした愛しい背中。 そして、あの時も、 今も振り返ってはくれない この背中。 「・・・先生は、俺のこと・・・ なんとも思ってないんですね。」 「・・・。」 無言の背中に俺は、もう何も言えない。 「・・・ごめん。」 やっと返ってきた一言に 俺は落胆した。 「・・・シャワーは先生から浴びてください。 その後浴びます。」 いつだって 懸命に振る舞うことしか 俺は出来ないのだろうか。 先生は「分かった」と小さな声で言い、 こちらを振り向くことなく 部屋から出ていった。 俺は、居た堪れなく 遠く聞こえる水の紫吹が弾く音が消える前に、 逃げるように家を出た。 酔いでふらつく足で マンションのエントランスから出ると、 緊張の氷が溶けたように 涙がドッと溢れてきた。 言わなければよかった。 告白なんて、しようと思わなければよかった。 そしたら、 一方通行の想いだったとしても、 気まぐれだったとしても、 ただの性欲を満たすだけの行為だったとしても、 何も知らないふりをして、 抱き合って 愛し合ってると錯覚出来たかもしれない。 後々苦しくても、辛くても、 この一時の快楽と幸せだけで あともう何十年過ごせたと思う。 火照った体はどんどん覚めていくのに、 俺の心は 櫻井先生への想いで どんどん熱くなった。

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