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第9章:弥生

僕はそのまま 油断していた長谷部の肩を押し倒し まだ何かを言いたそうにする口を 口で塞いだ。 舌と唇を存分に使い 長谷部の気を逸せながら、 ズボンを脱ぎ 自分の指で後ろを慣らした。 「弥生先生・・・ 本当に、ダメですって」 口を離した途端に聞こえた訴えなど無視し、 僕は、まだちゃんと勃っている長谷部のものに ポケットに入れていたコンドームを素早くかぶせた。 「これ以上は、、、。」 僕は躊躇うこともなく 突き刺すように 上から一気に体を重ねた。 「・・・ァ」 目を細く垂らす長谷部の口から 低音の声が小さく漏れた。 先ほどの長谷部の戯れも まるで愛しいものに触れるような 緩やかな視線も手の温もりも 全て頭の中から抹殺するように 僕は無我夢中で体を上下に動かした。 長谷部は 時折「ダメですって」などと発していたが、 快感には逆えず、 ハァ・・・ハァ・・・ と吐く息の間隔は徐々に短くなり、 そして荒くなっていった。 途中、寝そべった状態から 自力で腰を上げ、 座った体勢になっても、 もう僕を止めることはしなかった。 代わりに、 激しく体を動かす僕の額に沸き出た汗を 人差し指と中指の先で拭い、 そのまま後頭部にかけて、 ゆっくりと髪をとかし 優しすぎるキスをした。 違う。 僕が求めているものは こんなものではない。 もっと甚振られたい。 心の底の痛みを 消し去ってくれるような 肉体への痛覚が欲しい。 それなのに、 長谷部から まるで子供のように撫でられるたび、 目尻が熱くなる。 「好きですよ、弥生先生。」 そう言いながら 強く抱きしめられた時に 僕は下を一切触れられてもいないのに果ててしまった。 それから数分間 重なったまま 長谷部の腕に包まれていた。 「好きです。」 しぶとい長谷部。 「それは勘違いだよ。」 「勘違いではないです。」 「それなら、気の迷い。」 「先生!俺は、」 「もし、百歩譲って 君が本気だとしても、 僕は君の気持ちに応えることはできない。 だからそんな気持ち、 さっさと捨てた方がいい。」 「無理です。」 「忘れていないか? 僕は男だ。 そして今みたいに 誰とでもセックスできるようなやつなんだよ。 君みたいなノンケは これ以上関わらない方がいい。」 「ノンケとか、ノンケじゃないとか 関係なくないですか? どうしてそこで線引きするのです? 俺は一人の人間として、 弥生かなめが好きだと言っているんです。 俺の気持ちに応えて欲しいだなんて言ってません。 ただ知っていてください。 俺があなたを好きなことを。 俺は何度でも言います、あなたが好きだと。」 そんな真っ直ぐな言葉で、 そんな真っ直ぐな目で、 僕に訴えかけないで欲しい。 もうこれ以上僕の心の中に入ってこないでくれ。

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