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第14章:長谷部

タクシーの中の 弥生先生は、 なんだかソワソワしていて、 可愛らしかった。 そんな先生を 少しでも落ち着かせようと、 普段通りに接した。 「大変でしたね。今日の事故。」 「ああ・・・。 大石とか、また倒れそうになってた。」 「あいつダメですね、本当。」 「救急は無理だな。」 「ま、確か耳鼻科志望らしいんで。」 「あーそうだっけ。」 「ほら、隣の市にある耳鼻科専門の大石病院の 次男っ子ですよ。」 「あー、そうだったな。」 そんな話を続けているうちに あっという間に俺の家についた。 走行中に雨は降り出していて、 タクシーから降りて、 マンションにはいるまでの 数メートルで 俺たちは、土砂降りに打たれた。 エントランスで ビチョビチョになったお互いを見て、 弥生先生がフッと、笑ったので 俺も、思わず笑ってしまった。 エレベーターの中に入ると、 弥生先生は、自分の鞄から ハンカチタオルを取り、 「使いな。」 と差し出した。 「いや、もうすぐ部屋なんで。」 と言うと、小さくため息をつき、 俺の額に垂れた水分を吸い込んだ前髪を拭いた。 自分も濡れているのに、 俺の頭部を上目で見つめ、 一生懸命に俺の髪を拭く先生が とても愛しく思えて、 俺はそのまま 短くキスをした。 すると先生は、その唇を繋ぎ止めるように 俺の頭をそのまま押さえて、 俺の口内に舌を入れた。 絡まる舌に夢中になり、 エレベーターが既に俺の部屋のある階で止まり ドアが開いていたことに 二人とも気づいていなかった。 閉まりそうになった時に やっと気づいた俺は、 まだ物欲しそうな顔をした弥生先生の手を取り、 エレベーターを出た。 部屋に入るなり、 俺たちは靴のまま 玄関先で、先ほどの続きを始めた。 途中、濡れた自分のシャツを脱ぎ、 弥生先生が来ていたシャツも脱がせた。 冷えた体を温め合うように 背中をさすって抱きしめ合いながら、 何度もキスを繰り返した。 どんどんと俺の口の中で溜まっていく 弥生先生の口から渡る液で 溺れそうになり 口を離すと、 「・・・長谷部・・・下が、苦しい。」 と弥生先生は甘い声で訴えた。 俺は、もうたまらなくなって、 口の中のものを飲み込むと、 「とりあえず、中に入りましょう。」 と 玄関の先へと進むことを促した。 玄関の先にある リビングルームに先に入った弥生先生は、 「長谷部の部屋って感じだな。」 と言った。 「どんな感じですか?」 「きっちりしてる感じ。」 「先生には俺がそう見えてるんですね。」 「うん。」 そう頷く先生の手に 後ろから自分の手を重ねた。 「抱いてもいいですか?」 先生は、今更?と言うような表情で 俺の方を振り向いた。 「・・・わざわざ聞くなんて律儀だな。」 「大事なんで。」 「・・・うん・・・、抱いて欲しい。」 小さな声で、そう照れるように言い、 ギュッと俺の手を握り返した先生を 俺はそのまま ベッドのある部屋へと連れて行った。

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