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6,夢中

__絶対に運命だと思った。  俺はクラスメイトの佐伯結城という男が好きだった。 俺のバース性はベータ、そして彼のバース性も同じくベータだった。  俺たちは、お互いが惹かれあっていることを知っていた。何をするのも一緒で、お互いが誰よりも何よりも大切だと思っていた。周囲もそれに気づいていた。 だが、ベータの男同士というだけで、俺たちは結ばれることはなかった。  彼とは幼馴染で、小学生の頃からの付き合いだ。地元で有名な中高一貫校にともに進学した。家もさほど遠くはなく、学校の外でも多くの時間を共に過ごしていた。 __あの時までは。  中学三年生の冬休み前に行われた、第二次バース性検査。  極稀に、成長の過程でバース性が変化する者がいる。だが、バース性が幼少期に行われる第一次バース性検査の結果と変わることはほとんどない。発覚する大体の要因が、その一次検査で誤診された者なのが実情である。身体それ自体が変化する変異体はほんの一握りだ。  だから、「Ω:オメガ」と書かれた結果用紙を見た時、手が震えた。それはオメガ性を悲観しての不安や悲しみからの震えではない。オメガになれた喜びからであった。何度も自分の名前とバース性の書かれたその紙を確認した。間違えではありませんようにと、何度も人知れず願った。  その後専門の機関で再度精密検査を受け、「オメガ」であることが確約された。経過観察のためしばらく検査で入院をすることになり、彼に電話でそのことを伝えると、「わかった」とだけ返事をされた。喜んでくれると思ったのに、どこか素っ気ない返しだった。なんとなく、結城と自身の気持ちの中に差があるような気もしたが、「明日にでも見舞いに行くよ」という結城の言葉で、そんなことも気にならなくなった。  そして翌日、病床を訪れた結城は一枚の紙を俺に見せた。それは「α:アルファ」と記された、第二次バース性検査の結果の紙だった。  俺はベータからオメガに、彼はベータからアルファになった。  こんな奇跡は偶然ではなく、必然だと思った。俺たちは運命の番で、惹かれるべくして惹かれあっていたんだと。そう信じて、疑わなかった。  だが彼はその後、あまり見舞いに来てはくれなかった。  高校に上がるタイミングで、いろいろ忙しい時期であったし、自分にばかり構ってはいられないのだろうと、誰にではないが言い訳をした。  退院の時ですら、電話をよこしただけで、迎えに来てはくれなかった。  学校で久しぶりに再会した時、結城がどこかよそよそしく、なんとなく俺を避けているように感じた。少しすると、彼は俺ではなく一学年下の男の子と連れ添うことが多くなった。その子は、いかにも愛らしい容姿をした、学校でも有名なオメガだった。  そして、結城が自分に見向きもしなくなって、初めてその結城の素っ気ない態度の理由を知った。 俺は、オメガ性になったことを結城以外の誰にも伝えてはいなかった。もちろんそれは親や先生が今後の学園生活を見据え、隠していた方が穏便に過ごせるだろうと配慮した結果である。幸い、成長過程の半分はベータだったため、一般的なオメガよりは学力も体力もそれなりにあった。言わなければ、成長が少しわびしい程度のベータに見えるだろう。  でも、そんな事情を抜きにして、俺は誰にも言うつもりはなかった。  _だって、このオメガ性は結城のためのものなのだから。  何より、彼以外に知らせる必要性を自分自身が感じなかった。  対照的に、彼がアルファになったことは学校中に知れ渡っていた。そして、彼とその子が運命の番であるということも。ただでさえ目立つ彼らの存在を見ていることが辛くて、次第に俺の方から関わることをやめた。

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