「キキ、おつかれさま」 「相模もお疲れさま」 「褒められたね。俺、今日すごい不安だったんだけどキキとこうして仕事が出来てよかった」 　率直な相模の感想に、キキも思ったことを返す。 「僕も不安だった。自分がメインの撮影なんて初めてで」 「そう？　全然そういう風には見えなかったけど」 　「よく頑張りました」と相模に頭を撫でられ、やっと下がった熱がまたぶり返す。二人の雰囲気に周りもざわつき始めた。 「もう！　そういうのやめてって言ってるでしょ！」 　キキがひそひそ声で相模に抗議した。相模はその様子を面白がっているようだ。 （僕年上なんだけど！） 　年下に子ども扱いされて恥ずかしい。 「今日ずっと思ってたけど、キキって白が似合うね。いつものかっこいい衣装もいいけど、今日のふんわりとした衣装も似合ってる」 　キキの衣装は布をふんだんに使った、ワンピース型の女性っぽい衣装だ。 　相模の衣装はそれと対になるように、パンツルックで男性っぽい衣装になっている。 　ユニセックスもコンセプトの一つなので、二人の衣装は男性女性どちらも着ることが出来るようデザインされている。また性別だけでなく、アルファ性の相模とオメガ性のキキを採用することで、バース性の調和という隠された演出の意図があった。 「今日のキキは、なんか、前に見たクラゲみたい」 　キキの衣装の裾について、床まで伸びているレースを触りながら相模は言った。 　確かにひらひらと舞う子の衣装は、スカートが丸く広がっていることもあり、クラゲに見えなくもない。でも褒められているというより少しイジられている気がする。 「クラゲみたいってどういう意味？」 「綺麗って意味だよ」 　相模はそう、恥ずかしげもなく言い放った。