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「なぁ!この花を胸に刺した奴見なかったか!?」
「花?」
(まだ、まだこの近くにいるはずだ)
昨日の今日、そんなに離れてるはずがない。
花だってきっと枯れてはいない。
「ぁ……あぁ見たな。
確かあっちの方に歩いて行ったぞ」
「っ、ありがとう!!」
俺は、見落としていた。
確かに新しい太陽が昇ると、人々は神子と出会ったことを忘れる。
だが、そいつがどんな奴だったかは記憶に残るんだ。
(顔は覚えてなくても、服装とかの特徴は残るのか)
ただ「そいつが神子だ」という事実を忘れる程度で、ちゃんと普通の人としてなんでもないように覚えられている。
これまでの俺は、きっと聞き方が不味かったんだ。
「はぁ…っ、は、は……!」
聞いては走り 聞いては走りを繰り返し、ひたすら全力疾走。
そして、たどり着いた先はーー
「みず、うみ……?」
昨日1番端の村へ行く途中にあった、静かな湖。
そこに、
「ーーっ、」
ひっそりと佇む 人影がひとつ。
それは、こちらの気配を感じたのかゆっくりと振り返った。
「ーーーーっ!」
(………あぁ)
見開かれた大きな瞳、ビクリと震える小さな肩。
それに合わせて揺れる、胸元の白い花。
あんたはーー
「……よう。
探したぜ、〝兄貴〟」
そう これは
これは、俺の〝兄〟だった人だ。
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