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「…っ、―…」 ここは夢の中なのか、と思わず目を疑った。 だって、 さっきまで、確かにごく普通の…息なんてしてるはずのないただの紙だったはずなのに。 『…にゃあ…?』 さっくんにだっこされたまま、じいいいっと熱でも出すんじゃないかってくらいに見つめていると…猫が首を傾げるような仕草を見せた。 その鳴き声で、やっと我に返る。 「…っ、わ、にゃんこ、すご、さっくんすごい…!」 多分、今までの人生で初めてってくらい…目をキラキラと輝かせ、感動していた。 目の前で起こっている奇跡に、むねがいっぱいになる。 おろして!とぽんぽんさっくんの肩を叩くと、「はい」とクスクス面白可笑しそうに声が笑う。 胴に回った腕にぎゅっとされ、そのままトン、と宙に浮いていた足が地面につく。 わー!と喜んで触ろうとして、…こっちを見ている猫と間近でぱちり。目が合った。 「わぎゃ!」 驚き、びくつき、…一気に走って戻り、さっくんの後ろにこそこそと隠れる。 そのスーツの裾を掴んで、見上げた。 「……触っても、噛まない?」 この前は、確か触ろうとしたら危ないから駄目だと言われた。 それに、猫が人を爪で引っかいているところもじっさいに見たことあるし、…今更怖気づいて、ぶるぶると震える。 「大丈夫ですよ」 「…ほんとか?」 「はい。この猫に限っては絶対に危ないことは致しませんので、どうかご安心ください」 「もし怖いなら、俺が先に触りましょうか?」と屈んでオレと目線を一緒にして頭を撫でてくれるさっくんに、こくんと頷く。 「こっちにおいで」 「…(…わ、)」 片膝を畳につけているその後ろにぴったりとへばりついて、さっくんの声に従ってテコテコこっちに歩いてくる猫を見る。 (…本当に、来た…) おお、と素直に感動し、ぱちぱちと手を叩いた。 …と、躊躇いなくさっくんが猫の方に手を伸ばし、 「さ、さっく…」 噛まれたら、オレが主人なんだからさっくんを守らねば。となんとなく掴んでいたスーツの裾をぎゅ、って引く。 けど、 「…ぁ…」 「ほら、怖くないでしょう?」 手が、よしよしと何の抵抗もされずにその毛並みを撫でていた。 頭を撫でられれば、猫はくすぐったそうに目を細めて小さく鳴く。 「…可愛い…」 「ふふ、そうですね」 「…オレ…っ、オレも、触りたい…!」 授業でせんせいに発言するときみたいに手を挙げ、…少し身体をずらしたさっくんの横に、両膝をついた。 目はもう既にその猫にくぎ付けだった。 撫でる手が離れていった猫が、近づいてきたオレを今度はなんだ何の用だ何事だというような顔で見上げてくる。 (…さ、触りたい…っ!) もふもふしたい! そんな邪念をかかえつつ、でも、未だに緊張しすぎて手を中途半端に浮かせただけになる。 「夏空様、」 「ぎゃ!」 ビクッ

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