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集中しすぎてたせいか、隣からかけられた声に驚きすぎて勝手に身体が跳ねた。
「な、なんだ…っ!」
「にゃーって鳴いてみてください」
「っ、?…わ、わかった」
もしかして、この猫は言葉を話せるのか。もしくは、オレが猫の言葉を理解できるようになるとか。
考えても仕方がない。
とりあえず、さっくんのアドバイスに従って、すう、と息を吸う。
「にゃ、にゃー…!にゃ…?」
とできるだけ迫真に迫った声で猫にしゃべりかけてみた。
…けど、
「…………………」
ち ん も く。
猫はただコイツ何してるんだという感じでオレを見てただけだった。
辛い見つめあいだけが続き、待っても待っても世界は動かない。
……何故だ。
「…っ、何にも話しかけてこない…!」
絶望!
と、涙を滲ませて横を振り向こうと…して
「…っ、本当…貴方が可愛すぎて、俺の方が先にどうにかなってしまいそうです」
なんて熱を帯び、照れと歓喜を滲ませた声と同時に、ぎゅうっと後ろから抱きしめられた。
ちゅ、と頭の後ろらへんにキスを落とされ、薄いTシャツの上から羽織っていたパーカーのフードを頭に被せられる
「……わ、?なに…?」
そして、肉球のついた猫手袋を、手に嵌められた。
ついでに、がお、とする時のように手首の下を支えた手に、持ち上げられる。
「今、夏空様は猫です」
「…へ?」
「なので、猫同士仲良くしましょう?」
後ろを見上げると、にっこりと微笑まれる。
「ご覧ください」と差し出された鏡を見れば、ああ、そういうことかと納得した。
(…確かに、今のオレの格好は猫手袋嵌めてるし、被ってるフードにちゃんと耳もついてるから、猫っぽい、…けど)
「…な、仲良くって、」
「まぁ、猫同士というのは半分冗談ですが、…最初は直接ではなく、手袋越しに触るところから始めてみましょうか」
「…あ、そっか。その手があった」
「そのために、まずはゆっくり深呼吸して、肩の力を抜いてください」
「すー、はー…ふぅ…」
「夏空様が普段していらっしゃるように、友人同士が話す感じで接すれば…相手もきちんと応えてくれますよ」
「…っ、うん!」
後ろからさぽーとしてくれるらしい。
そうやってオレより大きな身体にぎゅうって抱きしめてもらってると安心できる。
(そうだな。肉球手袋なら、噛まれても痛くない。)
「…さ、触る、ぞ…」
「はい」
後ろでぎゅっとしてくれてるさっくんの声を確認し、おそるおそる手を伸ばした。
どきどき、と高鳴る胸をおさえ、ゆっくりと距離をちかづけていく。
…と、
「…っ、」
ぱふん、と肉球手袋越しに、手が、猫の身体があたる。
…けど、ちょこんって感じに座っていた猫が不意に動き、すぐにびくっと手を引いた。
「わ、わ、ぎゃ…っ、」
パニックになって後ろの身体に縋る。
さっくんが「大丈夫。怖くないですよ」と微笑み、よしよしとオレの頭を撫でる。
もう一度元気づけるみたいにぎゅってしてくれた。
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