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…これだからこの執事は変態だと言われるのをわかってるのか。
「…っわ、ぐ、ぐるじい…」
最早抱きしめてくる力が強くなったせいで、猫を触っていられる状況じゃなくなってきて、じたばた手足を動かす。
うああ!と叫びながらとにかく振り上げていた手を掴まれ、今度はお腹に抱き付くようにぎゅうってされた。
「夏空様…」
「っ、」
なんだかいつもよりやけに抱き付いてくるな、と不思議に思いつつ、オレを抱き締めているさっくんを見る。
…と、
ぱさああっと紙が崩れるような音がした。
「…え、」
パッとその方向に目を向けた。
…しかし、そこにさっきまでいたはずの猫の姿はなく、…あるのは床に散らばっている数十枚の紙だけで
「…っ、ぁあああ…!!」
「これ以上愛着をお持ちになられると色々まずいので、戻しました」
「なんで、なんで戻…っ!?」
がばっと掴みかかる勢いでさっくんに詰め寄る。
もっと触りたかったし遊びたかったのに!と若干泣きながらわあああとさっきまで猫だったところを指さした。
…すると、
「貴方のペットは、…俺だけで充分でしょう?」
「…っ、」
そんな吐息まじりの声が聞こえ、両頬にそっと触れてくる手。
「さっ、くん…?」
「……」
微かに揺れているように見える瞳が…オレを映している。
…沈黙のままじっと至近距離で戸惑うオレを見据え、…不意に長い睫毛を軽く伏せた。
「…寂しいです」
「…へ、」
「夏空様が、…猫にばっかり夢中で…凄く、寂しいです」
「……っ、」
(さみしい…?)
予想もしなかった言葉が返され、ぽかんとする。
目を瞬いた。
「にゃんこに触って、10分も立ってないのに?」
「……はい」
「……さっくんが生み出したにゃんこなのに?」
「…………はい」
少し俯き加減で小さく頷くさっくんが、…こんなにオレよりおっきいのに、まるで子どもみたいな顔をしている。
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