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そして、珍しく…今は身体のどこかに痛いところがある小さい子みたいに暗い影を落とし…幼く見える顔。
そこに、言い表せないほど悲痛で、悲しげな表情を浮かべた。
「…嫌です。嫌なんです。夏空様に必要とされなくなるなんて…それだけは絶対に嫌で、」
「…っ、」
「だから、猫をそのままにしておいたら…俺をいらなくなるかもしれない…と、そう思ったので……戻しました」
申し訳ありません、と謝りながら、不意に頬に触れてたさっくんの手が首筋をおり、それから…なぞるように指に触れてきて、絡め、ぎゅっと掴んでくる。
そして、
「…え、…わ、…っ」
何故か泣きそうな顔をして、そのままオレを押し倒してきた。
「…夏空様…」
「…ッ、な、顔、かおが、近…っ、」
とすんと背中が後ろの畳にぶつかる前に優しく腕を背に添えてから倒してくれはした、けど…
(…な、なんで…)
ごくり、唾を飲む。
頭、背中、全部が畳とくっついてる感触。
重力で下に軽くさらりと垂れている髪。
指を絡め、オレの顔の横で床におさえつけてくる手。
オレの身体に覆うようにして跨っているスーツを纏ったすらっとした長身。
そして被さっているせいで、電気の影になって暗く…切なそうな表情をして近づいてくるさっくんの顔…の後ろに見える天井。
全部に、目をぱちくりした。
「さ、さっくん…?」
「…キス、しても良いですか…?」
「っ、」
…微かに唇が触れてるぐらい近い状況で、…急に思い出したようにさっくんが吐息まじりの低く掠れた声音で聞いてくる。
「う、うん…。いい…けど、」
(…というか、突然すぎてびっくりした)
戸惑いながら、…なんとなくオレも声をひそめて許可を出す
…と、
「…っ、んぅ…」
すぐに唇が重なった。
柔らかく薄い形の整った唇が押し付けられる感触と…触れる直前の微かな熱い吐息。
それだけで、勝手にぴくっと肩が震えた。
「…っ、ん…ん、ふ…」
重なっては離れ、すぐにまた重なる。
なんだかいつもより余裕のなさげな啄むようなキスを何度も繰り返され、次第に息が荒くなってくる。
オレが寝転んでて、さっくんが上からキスしてくるせいか…いつもより唇を塞がれると苦しい。
角度を変えながらねっとり舌を絡ませられる。
そうすると自然と押さえつけられることになって、頭の下にある畳の感触がより濃くなった。
今さらやっぱりやめる、なんて言って逃げることなんてできそうにない。
しかもわざとかそうじゃないのかわからないけど、…開いた股の間に割って入ってるさっくんの膝がオレの大事な部分を小刻みにねりねりしてきた。
その諸々のせいで、心臓がドキドキしてきて、頬があっつくなって紅潮してくる。
「…は…っ、…ほら、…夏空様も、…あーん…して下さい」
「…ん…」
畳に押し付けられている手の甲。
そのぴったり絡めた指が汗ばんできたのを感じながら、まだ小さく震えてる手を安心させるようにきゅっと力を入れて繋ぎ返す。
…すうっと息を吸って口を開けた。
そして、軽く瞼を伏せ、薄目を開けながら舌を擦り合わせて、もう一度唇を塞いできたさっくんを迎え入れる。
「…っ、…夏空様、…そらさま…」
「は、…ふ、…ぅ…っ、待、ぁぅ…、ぅ…」
…まるで食べ合ってるみたいに、お互いにキスをした。
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