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第7話

あれから城崎のアタックは止まらなかった。 毎日ランチを共にし、定時後も俺と同じ時間まで働いている。 ブレイクタイムには相変わらず俺に珈琲を注いでくるし、最近は何かと差し入れも多い。 上司は「気に入られてるな!」と笑っているが、俺はこの好意を素直に受け取れなかった。 だって、下心があるとわかっているから。 何でも受け取っていたら相手に期待させてしまう。 だから断ったりしていたが、城崎は期待しないから下心とか関係なしに受け取ってほしいとお願いしてきた。 なので、最近は城崎の好意を受け取っている。 「城崎〜。あの大口の契約取れたんだってな?」 「はい。あとO社とも今取引中です。」 「O社ってあのO社か?!いやぁ、さすが営業部のスーパールーキーだな。望月ぃ、ウカウカしてるとおまえも超えられるぞ?」 部長からヤジが飛んでくる。 もう俺の後輩たちはみんな城崎に成績を越されている。 長年信頼を積み上げてきたという強みがある俺でさえ抜かれそうなのだ。 本当、数年後には俺より上の立場に立ってそうだな…。 「先輩、ご褒美ください。」 「へ?」 「O社の契約取れたら、またご飯連れていってください。」 O社ってすげぇ大口だぞ。 俺も一年前くらい掛け合ってみたことがあるが、門前払いされた。 それをもう取引中とまで言ってるんだから、既に一年前の俺を超えている。 「ガハハ!飯の一つや二つくらい連れてってやれ、望月!」 「はぁ…。」 部長にもそう言われ、城崎のお願いに了承した。 まぁこの一週間で城崎が俺に無理強いをすることはないと分かった。 城崎は実に紳士的な男だ。 多分飯に連れていったところで、襲うといった(たぐ)いのことはしてこないと思う。 「先輩、すぐに取ってきますからね。」 「期待してるわ。」 「任せてください。」 城崎はこの後、ものの二週間でO社の契約を勝ち取って社に帰ってきた。 営業部内は大歓声で、そして俺は城崎をご褒美ディナーに連れて行くことが決定した。

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