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第8話
お祝いに連れていってあげられるようなお洒落な店は知らないから居酒屋でいいか尋ねると、城崎は「俺が選んでもいいですか?」と申し出た。
別に高くても何でも奢ってやるつもりだったから「いいよ」と伝えると、城崎が案内した店は小洒落たバーだった。
階段を降り扉を開けると、カランコロンと鐘が俺たちの入店を中に知らせた。
店内は壁に大きな水槽があったり、至る所にラバランプが配置されていて、めちゃくちゃお洒落だった。
「すげぇ。」
「いいでしょ、ここ。美味いのにリーズナブルで、落ち着くんです。店主に癖ありですけど。」
城崎は常連なのか、店員と話した後、奥の方の水槽近くにある二人席へ通された。
ワインとかシャンパンも種類が豊富で、メニュー表は酒と料理で別にしてあった。
「注文任せていい?好きなの頼んでいいから。」
「じゃあ俺のおすすめ頼みますね。」
「ボトルも欲しかったら頼んでいいよ。」
「太っ腹っすね。でも、ワインとか先輩が悪酔いしそうなのでやめときます。」
城崎は笑ってそう言い、店員に注文をした。
俺のこと本当に性的目的でしか見ていないなら、酒で潰してホテルに持ち帰ればいい話だ。
それをしないこいつは相当紳士的なのだと思う。
「あらぁ。夏くん、可愛い子連れてるじゃなぁい?」
「うわぁ?!え、えっ?!」
突然背後から現れた人に太腿を撫でられてゾワっとする。
びっくりして後ろを向くと、美人だけどガタイが良い人がいた。
ぱっと見女性。声と体格的に男性。
「麗子 ママ、殺すよ?」
「怖い怖い。ごめんなさい。」
城崎が美人さんの腕を掴んでドスの効いた声でそう言った。
え、物騒。
城崎もそんな言葉使うんだ。
「ママってことは…」
「こんばんは♡このバーの店主、麗子ママです♡」
「はじめまして。城崎の同僚の望月です。」
「ほんっと可愛い…。夏くんの好みど真ん中ね。ここに連れてきたってことは夏くんがゲイだってことは知ってるんでしょう?」
麗子ママはうっとりとした顔で俺を舐めるように見回した。
てか、城崎の好みど真ん中なの?俺。
城崎のプライベートとか知ってそうな人が言うんだから、本当にそうなんだろうな。
「もう付き合ってるの?」
「あ…、いや…」
「まだだよ。今本気で口説いてんの。」
「やーん♡本気の夏くんイイわね!初めて見たわぁ!素敵!今日はおまけしちゃお〜っと!」
ママはスキップしてカウンターに戻っていった。
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