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第9話

城崎は「あー」と言いながら両手で顔を隠している。 「城崎、初めてって…」 「うるさいです。」 「今までも付き合ってきたんじゃないの?」 「あんま言いたくないですけど、今までは遊びばっかだったんです。入職して、先輩に出会って一目惚れして。それからはセフレは全部切りました。」 城崎は口籠もりながらそう言った。 今は、いないんだ。モテるだろうに。 「わぁ。遊んでたんだ。」 「引かないでくださいよ!だから言いたくなかったんです…。でも、本当に神に誓っても先輩のこと、本気ですから!それだけは本当!」 「うん、わかってる。」 城崎の目見てたら本気なことくらい分かる。 てか俺と出会って一年、セフレも完全に切ったならそういうこともご無沙汰なのだろう。 なのにホテルで、あの状況で好きな相手である俺を犯さなかったのは相当忍耐力がいるだろうな。俺も男だから分かる。 「城崎って性欲あんまない方?」 「めちゃくちゃありますよ。」 「わぁ。」 「そういう先輩は?」 「まぁ、そこそこ強い方かも。」 そう答えると、城崎は「聞くんじゃなかった…」と天を見上げた。 さっきから上向いたり下向いたり忙しい奴だな。 そうこうしている間に、カクテルと前菜がテーブルに運ばれてきた。 すげぇ。お洒落なバーのカクテルやべぇ。 「これなんて言うの?」 「スクリュードライバーです。」 「カクテルってなんか意味あるんじゃないの?これは?」 「普通そういうこと聞きます?」 照れ臭そうに顔を逸らす城崎。 冗談で聞いたのに、これはなんか意味ありそうだな。 スマホで『スクリュードライバー 意味』と検索するとすぐにヒットした。 「貴方に心を奪われた。」 「ブフッ!ゲホッゲホッ…!」 「やべー。城崎、めっちゃ臭いことするじゃん。」 「………悪いですか。」 「いや?俺は好きだよ、こういうの。」 俺がそう言うと、城崎は顔を真っ赤にした。

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