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第19話

週明けの月曜日。 もう4月も最終週を迎えていた。 「遅くなったけど、今週末に新卒の歓迎会やるぞ。全員参加だから予定空けとけよ〜。」 朝の朝礼時に部長から告げられた。 今年は営業部には一人だけ新卒が入ってきている。 まだ業務を覚えるのに必死で慌ただしく走り回っている雀田(すずめだ) 琥太郎(こたろう)くんだ。 雀田くんが頑張ってることをよく分かっているつもりだし、後輩好きな俺としては歓迎会するのは全然いいんだけど…。 「何で今?」 「涼真!」 部長のお知らせに悪びれもなくツッコミを入れたのは、俺の同期であり親友の柳津(やないづ) 涼真(りょうま)。 めちゃくちゃいい奴だけど、ドが付くほどの天然。 あと、思ったことをすぐ口にする。所謂KYってやつだ。 「…………。」 「だって、4月初っ端みんな定時に帰れるくらい余裕あったじゃないっすか。なんで忙しくなってきた今なんすか?」 「や、柳津…!やめろって…!」 「何で?みんな思ってるだろ?」 部長が黙ってるってことは図星だ。 大方歓迎会のことをすっかり忘れてたってところだろうか。 それにとどめを刺すように図星を刺しまくる涼真は本当勇者としか言いようがない。 そしてみんな思ってるけど、ここでみんなが同意したら部長に恥をかかせることになる。 「し…、新卒の子が私たちのこと多少知ってからの方がリラックスできるじゃない?部長の気遣いくらい察しなきゃダメよ〜……。」 「そ、そうだよ。柳津はそういうとこ気が利かないなぁ〜…。」 先輩たちが涼真の失態、かつ部長のご機嫌を取るためフォローを入れる。 部長はホッとした様子だ。 「たしかに…。すみませんでした。部長もすみません。もちろん俺、参加するんで。」 「俺も参加で。」 「私も!」 なんとか丸く収まったようだ。 涼真も納得したらすぐに謝れるタイプだから、面倒なことにならなくてよかった。 部長の機嫌損ねたら、ご機嫌取りは先輩たちに回るからみんな必死だ。 「じゃあ今日も業務集中して、定時退社な〜。」 「「「はーい。」」」 朝礼が終わって全員が持ち場に戻った。

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