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第20話
朝礼後、涼真は部長に呼び出されて何か小言を言われていた。
涼真は俺の隣のデスクだ。
こっちに戻ってくる涼真の両手には山積みの資料。
「なぁ綾人。何で俺に業務が増えるの?」
「部長の機嫌損ねたからだろ。」
「でも俺間違ったこと言った?」
「言ってないけど考えりゃ分かるだろ。おまえ本当、世渡り上手なのか下手なのかわかんないな。」
涼真は雰囲気と性格を総合した結果、大体の人間には好かれるが、一部の人間には嫌われる。
いや、嫌われるというよりはイラつかせると言えば正しいのか。
天然だし悪気がないのはみんな分かっているけど、空気読めなかったりとか、さっきみたいに上司のプライド傷つけたりとか。
大抵の人には「可愛い。」とチヤホヤされているが。
「綾人〜。頼む〜、手伝って〜〜。」
「しゃーねぇな。」
涼真から三分の一だけ業務を引き取り、自分のデスクに向かった。
プライベート用のスマホに通知が来て、開くと涼真から『ランチ一緒に食べよ!』とメッセージが届いていた。
了解、と返事を送ると、次に仕事用の携帯にメールが届く。
『先輩、今日ランチ一緒にどうですか?』と連絡が来ていた。送り主は勿論あいつだ。
「城崎。」
「はい♪」
「仕事用の携帯にプライベートな連絡してくんな。」
「…………。」
「なんだよ。一年目の時から言ってんだろ。」
「だって先輩、連絡先教えてくれないじゃないですか…。」
拗ねるなよ、子どもか。
本当犬にしか見えない。
「………ったく。早く読み取れ。」
「えっ!?いいんですか?!」
メッセージアプリのQRコードを見せると、城崎はぴょこっと隠していた耳と尻尾を現した。
「その代わり仕事用のには業務連絡しかするなよ?」
「わー!嬉しい!嬉しいです〜!毎日連絡していいですか?あ、電話!電話したいです!」
「やめろ。無駄に連絡したら消す。」
「?!!」
城崎はブンブン振っていた尻尾をスッと消した。
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