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第32話
「先輩、本当に…?」
「うん。」
「酔った勢い?それとも体目当て?」
「もう酒はほぼ抜けてるし、体目当てなら女の子でいいだろ。」
「本当の本当の本当?夢じゃないですか?」
「現実。」
「先輩、俺の頬抓ってみてください。」
城崎の脂肪のない頬を摘んで引っ張ると、城崎は「いひゃい」と嬉しそうに顔を歪ませた。
俺と付き合えるってだけなのに、めちゃくちゃ幸せそうな顔するじゃん。
「城崎。」
「もう、見ないでください。顔めちゃくちゃニヤけてます、俺。」
「うん、知ってる。」
両手で顔を覆い隠す城崎の手を掴み、ベッドに縫い付ける。
今までの余裕ある顔じゃなくて、真っ赤に頬を蒸気させた照れまくりの城崎の顔。
きっと城崎が初めて、俺だけに見せる顔。
「可愛いな。」
「先…ぱ……」
唇を重ね、舌をねじ込む。
もちろん城崎に拒否する理由はなく、あっさりと口を開けてくれる。
生まれたままの姿で、俺たちは貪り合うようにキスを続けた。
なんだろう。人生で感じたことないくらいの幸福感に満たされる。
初めて好きな子と付き合えた時より、
初めて好きな子とキスをした時より、
初めて好きな子とセックスした時よりも。
俺、実はめちゃくちゃこいつのこと好きじゃん。
「先輩、俺今人生で一番幸せです…。」
「バーカ。泣くなよ。」
城崎、俺もだよ。
俺も今、人生で一番幸せかもしんねーわ。
いつの間にこんな好きになってたのか分からない。
もしかしたら、認めたくなかっただけなのかもしれない。
本当は出会った最初から、俺の心はこいつに惹かれていた…のかもしれない。
「先輩も泣いてる。」
「うるせー。目にゴミ入ったんだよ。」
「ふふっ。好きです、先輩。」
「知ってる。」
素直じゃなくてごめんな。
でもきっと、おまえなら全部ひっくるめて好きでいてくれるんだろ?
「先輩。」
「ん?」
「これから死ぬほど愛していいですか?」
あまりにも甘い告白。
「当たり前だろ。」
こうして、俺たち二人の甘い甘い恋人生活が始まった。
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