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第46話
次の日は朝から大掃除だった。
千紗と暮らしてた時の家具、片付けてみると割とあった。
というか、俺は引きずってた期間が半年くらいと長かったから、それまで捨てられずにいたんだよな…。
で、諦めがついた頃にはもう捨てるのさえ面倒だった。
俺は思い出の品全部捨てなきゃ忘れられない!ってタイプでもないからこんなことになってしまったのだろう。
「なぁ、それも捨てんの?」
「これ、伊藤さんと選びましたよね?絶対。」
「まぁ、そうだけど…。」
「じゃあ捨てます。昨日約束しましたよね?」
小物とかだけでなく、同棲期間に一緒に選んで、今なお使ってる本棚とか絨毯とか、タオルとかカーテンとか全部捨てられていく。
俺ん家の家具なくなってしまうのでは?
「城崎、これ以上は…」
「約束破るんですか?」
「いや、そうじゃなくて…」
「足りないものは俺と一緒に買いに行きましょう。」
有無を言わせないこの圧力。
城崎の独占欲、一般人の十倍はありそうだ。
城崎が満足するまで家の中を整理し、朝から始まったこの大掃除が終わったのはお昼を過ぎて短針が3を指す頃だった。
「さてと。次は約束事を決めましょう。」
「約束事?」
「束縛、させてくれるって言ったじゃないですか。」
城崎はニコニコしながら俺に手を差し出す。
「何?」と聞くと、スマホを差し出せとのことだった。
城崎は俺のスマホの生体認証に自分の顔も登録し、俺なしでもスマホに触れるように設定した。
止めようとすると、「疾 しいことでもあるんですか?」と異議は認められなかった。
メッセージアプリを開き、友だち登録してる人を一人ずつ説明する。
「この人は?女の人ですよね。」
「高校の時のクラスメイト。同窓会で会った時に追加されたんだよ。」
「じゃあもう連絡することないですね。」
城崎がいらないと判断した人はどんどん削除されていく。
まぁ俺も連絡しない人を消されて文句を言う人間ではないから、大人しく城崎の奇行を見守った。
「この人は?」
「大学のサークルのダチ。」
「何サーですか?」
「テニサー。」
「絶対ヤリサーじゃないですか。テニスサークルの人全員削除します。教えてください。」
「ちょ、待てって!今でもたまに飲む奴いるんだよ!」
「テニサーにいる人とかろくな奴居ないでしょ。飲みサーかヤリサーの二択です。駄目。」
「俺もテニサーだったんだけど?!」
「先輩は特別です。」
数ヶ月前に飲んだサークル友達は何とか頼み込んで残してもらったが、それ以外のサークル仲間は全員削除された。
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