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第61話

「なぁ、千紗。本当に大丈夫なの?男三人と千紗一人だぞ?」 「ちゃんと連絡しとく!」 「そういう問題か…?」 せめて千紗だけでも帰らせようと試みるが、全くの無駄だった。 一度決めたら実行する、千紗はそういう子だ。 涼真は「どこ行くの?」「焼き鳥が良くね?」とかマイペースだし、対照的に城崎は全く喋らない。 結局涼真の希望通り、焼き鳥の有名な居酒屋チェーンに入る。 四人座れる個室のボックス席へ通され、千紗の隣はもちろん俺だった。 正面に座る城崎の視線が痛すぎて顔を上げられない。 「綾人、どれにする?いつものでいい?」 「うん……」 「柳津くんと城崎くんは?」 「俺は生で!」 「俺も生でいいです。」 千紗は店員を呼び、生2つとハイボール2つ、焼き鳥をいくつか注文する。 あー助けて。神様、助けて。この状況から俺を救って。 誰か腹下して帰るとか、予想外に千紗の彼氏が激昂するとか何でもいいからこの状況をどうにかしてくれ。 そんな俺の願いは届かず、スピードメニューと酒が運ばれてくる。 「はい!じゃあ私の誕生日と今週お疲れ様ってことで!かんぱーい!!」 「かんぱ〜い!」 千紗の音頭に乗り気だったのは涼真だけだ。 俺は弱々しくグラスを掲げ、城崎はいまだに無言。 このお通夜みたいな状況を理解していない千紗と涼真は、楽しそうに呑んで語らっている。 「城崎くんってイケメンよね!うちの課でも超人気!!」 「こいつ本当モテるからなぁ。ポーカーフェイスで何考えてるか分かんねーけど。」 「ねえねえ、城崎くんは彼女いないって本当?社内の噂だよね、城崎くんが恋人作らないって話!いないならうちの課の子紹介してもいい?」 「…………。」 なぁ!!本当にやめて?! こいつマジで怒ってるから!! これ以上火に油を注がないで?! 二人は城崎の無言からNGな話題だと悟ったのか、話を移行させる。 ホッとしたのも束の間、次は俺の話題だ。 しかも、恋人関連の。 「そういえば!ねぇ、柳津くん、知らない?綾人、彼女でもできた?さっき聞いた時、なーんか怪しかったんだよねぇ。」 「ん?聞いてない。綾人、そうなの?」 「…………。」 「ほら!無言って肯定でしょ?親友の柳津くんにも話してないんだ?」 「綾人、俺には言えよ。お前ずっと彼女欲しがってて、何回も手貸してやった俺に一言もなし?」 神様じゃなくて誰でもいいから、本当に助けてください。

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