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第64話

城崎は部屋に着くまでの間、俺の服の裾を手放そうとはしなかった。 まるで迷子になったあとの子どもみたいだ。 「ほら、着いたぞ。」 「お邪魔します。」 城崎にたくさん捨てられ、物が減った俺の家。 でもそのおかげで、城崎が安心できる場所になっていたら俺はそれで良い。 「先輩……、ギュッてして。」 「うん。」 仔犬みたいな城崎を、ぎゅぅっと安心させるように抱きしめた。 城崎は俺の首筋に顔を埋め、俺をぎゅーっと抱きしめ返す。 「先輩、先輩…」 「ちょ、(くすぐ)ったい」 城崎がグリグリ俺に顔を押し付ける度、城崎の髪が俺の頬や首筋にあたる。 頭を撫でてやると、俺の手に擦り寄ってくる。 「可愛い、城崎。」 「先輩、好き…」 「うん?俺も好きだよ。」 「ごめんなさい、先輩。嫌いにならないで…」 震えた声で城崎は俺に懇願した。 もしかしてずっと謝ってる理由って、そういうこと? 俺に嫌われると思ったのか? 「城崎」 「先輩、ごめんなさい…、許して…」 「これ以上謝ったら嫌いになるぞ。」 「……?!」 城崎はパッと俺から身を離し、青褪(あおざ)めた顔をした。 俺はそんな城崎の首に手を回し、少し背伸びして唇を重ねる。 「先輩……?」 「もう謝らなくていいんだって。俺、ほんとに怒ってないから。」 「でも……」 「でもじゃねぇ。っていうか、俺が今更お前のこと嫌いになれるわけないだろ。言ったじゃん。お前が思ってる以上に好きだって。」 「な?」と笑って言ってやると、城崎は(たま)らない顔をして俺を力強く抱きしめた。 反省した仔犬みたいな城崎も可愛かったが、やっぱりいつもみたいにブンブン尻尾振って元気なのが一番良い。 「先輩、キスしたい。いいですか?」 「駄目って言ったらどうするんだよ?」 「意地悪……」 城崎は片手で俺の手を壁に縫い付け、唇を奪う。 ()むようなキスは徐々に深いキスに変わり、力が抜けて床に崩れ落ちそうになる。 城崎のもう片方の手は徐々に下に降りて行き、俺の腰骨を撫でた。 城崎の脚が俺の脚の間に割り込み、力を抜くと城崎の膝がもろに俺の股間を刺激した。

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