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第71話

何度目かのコールで千紗は電話に出たようだった。 「もしもし?俺、柳津。………うん。………うん、そう。今綾人ん家いるんだけどさ。……うん。てか、スピーカーにしていい?」 涼真は千紗に許可をとって、スピーカーをオンにする。 涼真のスマホ越しに、千紗のテンション高い声が聞こえてきた。 『ちょっと綾人!あれ、何?!』 「あれって…?」 『城崎くんと付き合ってるって、本当?!!』 「……うん。」 『やっば……!ねぇ、綾人って…』 「違うぞ?!千紗と付き合ってたときは女の子が好きだったし、千紗のこと、真剣に考えてたんだからな?!」 今は恋愛感情がないとは言え、やはり元カノにゲイだと勘違いされるのもなんか嫌だ。 ちゃんと好きだったんだ、千紗のことも。 それを嘘だと思われるのは嫌だった。 『だよね。ごめんごめん。……じゃあさ!綾人ってノンケだったのに城崎くんに落とされちゃったの?』 「ノンケって何?」 『柳津くん、首突っ込まないで!!普通に女の子が好きだったよね?ってこと!!』 「へぇ。まぁノンケの意味がそれなら、綾人はノンケだっただろ。」 「うん。俺、城崎だから好きになった。」 『なにそれ〜〜!!純愛?純愛なの?!ねぇ、どこまでシたの??私も今すぐそっちの会話混ざりたい!行っちゃダメ??』 千紗の反応なんなんだ? めちゃくちゃ食い付くじゃん。 てか、元カノにそんなシモの話したくねぇよ。 それに………。 「駄目。城崎が嫉妬するから。」 『?!!尊死ッッ!!!』 「は?」 『応援する!!私、応援するよ、綾人!!』 「………?ありがとう??」 涼真の言った通り、本当に引いてる感じではない。 千紗がこんな興奮してる意味もわからないけど…。 でも、応援してくれるならいいか…。 『ねぇ、また今度話聞かせて!』 「嫌だよ…」 『あ、そっか、そうだよね…。私と話したら城崎くんが嫉妬しちゃうもんね。駄目だ駄目だ…。でもさ!やっぱ詳しく話聞きたいっていうか!生の声って言うの?そのさ、』 「何だよそれ…。もう切るぞ?」 『ええ〜?!なんで!もっと聞きたい!』 切ろうとしても千紗がぐいぐい食いついてくるので切ろうに切れない。 涼真は何か面白いことを思いついたかのように笑って、千紗に話しかけた。 「なぁ千紗ちゃん、聞いて。」 『なになに?』 「綾人、千紗ちゃんと同棲してた時の家具とか全部捨てられてんの(笑)」 「ちょ、涼真?!!」 「しかも千紗ちゃんの電話番号も消されてんの(笑)だから俺がかけたんだよ。」 千紗には言わなくていいことまで、涼真はペラペラと楽しそうに話す。 千紗は『尊すぎる…。もうお腹いっぱい。また情報提供よろしく…。』と震える声で電話を切った。

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