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第72話

千紗との電話が切れ、涼真は俺に向き直る。 「なぁ、綾人。これからはいつでも俺に相談していいからな。」 「うん。」 「惚気話(のろけばなし)でもいいし、逆にこんなムカつくことあったって愚痴でもいいからな。」 「うん。涼真、ほんとにありがとう。」 「当たり前だろ?親友なんだから。」 「涼真ぁ〜!」 涼真にハグとしようとした瞬間、ブブッとスマホが鳴る。 メッセージだ、城崎から。 『感極まって柳津さんとハグなんかしたら許しませんからね。』 なんてタイムリー。 涼真はそれを見て「監視でもされてんの?」って、また笑ってる。 「綾人、城崎に電話かけてやろーぜ。」 「え、嫌だ。」 「なんでだよ。」 「面白がってるだろ。」 「うん。」 涼真は「いいじゃん。」と笑いながら俺のスマホを取って、城崎に電話をかける。 『はい。』 「ぶはっ…!早すぎだろ(笑)」 ワンコールで応答する城崎に涼真がゲラゲラ笑った。 『なんで先輩のスマホなのに柳津さんが出るんですか。』 「悪いって。俺が面白くてかけた。」 『俺は面白くないんですけど。』 「俺今綾人と二人だけど平気?」 『平気だけど平気じゃないです。主に精神的に。』 涼真、確実に城崎を煽ってる。 城崎のこと煽ったらいいことないって、前学ばなかったのかよ。 頭を抱えているとインターホンが鳴った。 もちろんモニターに映るのは俺の恋人。 「どうしよう…。」 「いいじゃん。入れてやれば?」 「ちょ!?涼真!!」 涼真がロックを解除した。 城崎が部屋にたどり着くのは時間の問題だ。 一人で焦っていると、玄関の方からドアの開く音がした。 「先輩っ!」 「城崎、駄目っ………んっ!」 あぁ、ほら。 もう事情を知ってる涼真の前で、こいつが遠慮なんかする訳ないんだって。 息することさえ忘れてしまいそうなくらい気持ちいい城崎のキスに、俺は一瞬涼真のことを忘れていた。

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