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第73話

唇が離れて、城崎に体を預ける。 抱きしめられたままボーッとしていると、視界に涼真が映ってハッとした。 「りょ、涼真!ごめん!!」 「いや、いいよ?」 「本当見苦しいとこ見せて…」 「綾人、エロい顔してんね。」 「えっ?!!」 涼真に言われて自分の顔をペタペタ触っていると、城崎が俺の顔を胸元に引き寄せ、涼真の視界から隠す。 「柳津さん、先輩は絶対譲りません。」 「心配しなくてもとらねーよ。」 「先輩のえっちな顔見ちゃ駄目です。」 「おまえがそうしたんだろうが。」 涼真の言う通りだ。 自分で俺のことこんなにしといて見るなとは…。 というか、男と女のキスを目の前で見るのも気まずいのに、男同士のキスを見せてしまうなんて。しかも2回目。申し訳なさすぎる。 「城崎、綾人のこと幸せにしろよ。」 「当たり前です。」 「もし綾人のこと傷つけたら、おまえのその端正な顔ボコボコにするからな。」 「心配しなくてもそんなこと100%あり得ないので大丈夫です。柳津さんこそ、先輩に手出したらソレ、使いモンにならないようにしちゃいますからね。」 「こえーよ。」 城崎はニコニコしながらめちゃくちゃ怖いことを言う。 俺も涼真も、喉がヒュッて音鳴った。 「あーもう。こんな可愛い先輩見てたら堪らなくなりました。どうしてくれるんですか?」 「知らね。今日は会うつもりじゃなかったし、おまえが勝手にキスしたんだろ…。」 涼真がいるにも関わらず俺の髪や首筋にチュッチュッ…と(ついば)むようにキスしてくる城崎。 城崎の顔を手で押し退けると、城崎は何故か俺じゃなくて涼真を睨んだ。 「柳津さん、帰ってください。」 「はぁ?」 「先輩、他の人に見られてるといつもみたいに甘えてくれないんで。」 城崎の馬鹿野郎! 何てこと言ってくれてんだ。 てか、俺いつもそんな甘えてた…? 「そっか。んじゃ、帰るか。」 「ちょ…!涼真!」 「また話聞かせて。じゃあ、明日職場でな!」 涼真はニコニコしながら帰っていった。 玄関のドアが閉まる音がして、やっと全部が終わったんだと全身の力が抜けた。 「よかったですね、先輩。」 「うん………」 「もうあの二人の前では隠さずに先輩とイチャつけますね。」 「バ、バカ…。人前は駄目だって…、んっ」 安心して腰が抜けた俺を抱え、城崎は深いキスをした。

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