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第74話
週明け、当然のように社内で千紗に捕まった。
「綾人!ごはん!ごはんいこ!!」
「だから無理だって…。」
「違う!城崎くんも一緒に!お願いっ!!」
千紗はキラキラした目で俺を上目遣いに見上げてお願いした。
昔から千紗のお願いには弱いんだよなぁ。
「聞いとく……。」
「やったぁ!」
「城崎が駄目って言ったら駄目だからな?」
「うん!」
千紗は上機嫌に自部署へ戻っていった。
ナチュラルに俺に仕事を押し付けて。
いや、いつもより多いんだけど。
何だよこの量……。
「…………っ?!!」
デスクに戻ってペラペラと中身を確認していると、資料に紛れて挟まっていたものに驚きすぎて珈琲を吹き出しかけた。
キョロキョロと後ろに誰もいないか確認し、そっとそれを見る。
「何だよ……これ………」
資料の中に挟まっていたのは、ゲイ雑誌やアナルセックス初めて入門、あと漫画っぽいものまでいろいろ。
何なのこれ。
というか、職場にこんなの持ってくるな!!!
人目を気にしながら仕事以外の雑誌や本を鞄の中に詰めると、いつもより多く押し付けられたと思った仕事はいつもの半分くらいまで減った。
仕事が減ったのは嬉しいが、誰かに鞄見られたりしたらどうすんだよこれ。
「せーんぱいっ♡」
「ヒッ…!?」
「何そんな驚いてるんですか。」
突然耳に息を吹きかけられて、ガタッと椅子を揺らした。
おまけに今の心境じゃ心臓もバクバクだ。
「ランチ、行きません?」
「お、おぉ…、いいよ。」
「またあのお店にします?」
「うん。」
鞄をデスクの下の奥の方へ隠し、財布とスマホだけ持って部署を後にする。
流石に鞄なんて誰も見ないだろ…。
「先輩?」
「あー、ごめん…。うん……。」
「??」
俺はもし誰かに見られたら…という不安に駆られて、間延びした返事をした。
食事中も鞄が見られてないか気になって気になって、美味いはずのランチにあまり味を感じられなかった。
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