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第75話

家に帰って千紗に押し付けられた本を机に広げた。 おずおずと手を伸ばしたのはアナルセックス入門編。 職場でチラッと見た時から一番気になってた本。 「俺、何もしてないし…。」 心の準備だけは一丁前にしていたが、俺ができるだけ痛くないように努力してくれたのも、俺をリードしてくれたのも全部城崎だ。 多分セックスだし、挿れられる側にもちゃんと準備とかマナーとかあるはずだ。 一度だけシたあのセックス。 城崎は本当に気持ちよくなってくれたのか不安だった。 ページを捲ると、詳しく色々書かれていた。 「……えぇ、嘘…。そうなんだ……。はぁ…」 受け編、というページを見ると、直腸を綺麗にするのがマナーだと書かれていた。 たしかに。肛門ってアレ出すとこだもんな…。 そんなとこに人様の大事なモン挿れるって、普通嫌だよな。 誰でも手軽にできるのがシャワ浣というものらしい。 内容を読んで、これならシャワーがあればできそうだと思った。 練習…、してみようかな。 どうせ風呂入るついでだし…。 スマホのカメラでそのページを写真に撮って、風呂の準備をした。 「……えっと、シャワーのノズル…、え、外すのか?できる?…………うわっ」 外れた…。 これホテルのやつじゃできなくね? 器物損壊で訴えられるわ。 ツッコミを入れつつ次のステップへ進む。 「肛門にホース当てて……、ぬるま湯を……わっ、うわ」 お湯が中に入ってきて一気に不快感が襲ってくる。 うわ、出る。出るって。 裸のまま風呂から上がり、トイレに駆け込む。 座った瞬間、シャバシャバのお湯が便器に落ちた。 「キッツ…。これやんの?毎回?」 ケツから出てくるお湯が透明になるまでやるらしい。 俺は3回ほどこの地獄のような工程をクリアし、シャワ浣を終えた。 風呂にゆっくり浸かって体の疲れを癒す。 「城崎の汚したくないし、確かに最低限のマナーだと思うけど…。」 思うんだけど、これ毎回やるの相当キツい…。 俺はげっそりして風呂から上がった。 「もう俺、女の子になりたい……。」 女の子は女の子で色々大変なんだろうけど、浣腸はしなくていいだろって、それだけの理由でそんなことを思った。 でも、俺が女だったらそもそも城崎に愛してもらうなんてできなかったんだろうな…。 てことは、結局城崎とセックスするにはこれは避けて通れない道なのか…。 俺はがっくりと肩を落とす。 まだ続きがあるんだろうけど、これ以上今日は見てられないと思ってその本を広げたまま別の本を読み始めた。

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