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第83話

逃げ出すように部署を出ると、千紗が待ち構えていた。 「おはよう、綾人。」 「おはよ……。」 「昨日あげたの、ちゃんと見た?あれ私のおすすめでさ!ちょっと境遇が二人と似てるっていうか…、あ!城崎くんだ。」 「?!」 俺を追いかけようとすれば簡単に追いついただろうに、澄ました顔でゆっくり出勤する城崎。 俺はみんなに笑われたってのに…! キッ…と城崎を睨むと、くすくすと笑われた。 「先輩、何怒ってるんですか?」 「言わねぇ。」 「ふーん?まぁ、いいや。それより伊藤さん。」 「なーに?」 「腐女子なんですか?」 「あら…。綾人、見せたの?」 千紗に首を傾げられ、俺は頷く。 というか、俺に腐女子ってバラすことには躊躇(ちゅうちょ)ないくせに城崎にバレるのは気にするのかよ?! 内心ムッとすると、それが表情に出ていたのか千紗は笑った。 「だって、綾人ってイケメンだし性格も男前じゃん?それを超える城崎くんの包容力よ。もし私が綾人に未練あったとしても、腐女子としてこの二人を応援しないわけにはいかないよ〜〜!」 「何だよそれ……。」 「まぁつまり、城崎くんの言う通りだよ。私二人の邪魔する気ないから。城崎くん、安心して?」 千紗は城崎に「ね?」と念押しする。 「まぁ多少は。でも別の心配が増えました。」 「別の心配…?」 「先輩に変な知識与えないでくださいね。現に昨日のも先輩には必要ないですから。」 城崎は千紗から守るように俺を隠した。 千紗は嬉しそうに笑って城崎に謝る。 「ごめん!城崎くんって恋人を自分色に染め上げたいタイプだ?」 「まぁそうですね。なので、もう必要ないですし、できるだけ俺たちの関係に水を差すのやめていただいていいですか?」 「水差してるつもりないんだけどなぁ…。」 「遠くから見守っててください。」 「はぁい…。」 さっきまでとは打って変わってしょんぼりした顔をする千紗。 城崎色に染め上げられんの?俺。 「先輩、顔真っ赤ですよ?」 「何考えてんの〜?」 「うるさい。もう始業時間だし自部署戻れ。行くぞ、城崎。」 「はい♪」 城崎は心配そうに俺の顔を覗き込み、千紗はニヤニヤして俺を見た。 俺は城崎の手を引き、部署に戻った。

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