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第106話

「ふぅ…、お腹いっぱいですね。」 「やぁ〜、若いっていいね。あの量全部平らげちゃったんだから。」 結局味噌カツ、天むす、ひつまぶし、きしめん、味噌煮込みうどん、手羽先、あんかけスパなど様々な名古屋名物が机に並んだ。 かなりの量があったが、取引先の社長が自腹切ってご馳走してくれたものを残すわけにはいかず、全て残さず食べ切った。 ガッツリ系のものが多かったから、ほとんどは俺と城崎で片付けたが、俺も途中で胃もたれがすごくて、若い城崎がほぼ食べた。 城崎は食べすぎて気持ち悪いのか、少しぐったりしている。 俺は隣で吉野さんと契約更新のことについて説明した。 「よし、この条件ならまた続けて契約させてもらうよ。」 「本当ですか?!ありがとうございます!」 「何と言っても望月くんがわざわざ足を運んでくれたんだからねぇ。本当、いつも感謝してるよ。」 「こちらこそ。T社さんとはこれからもいい関係を築いていきたいです。」 契約更新が終了して、城崎とともに社を後にする。 吉野さんはあんなにたくさんご馳走してくれた上に、俺に手土産まで持たせてくれた。 「じゃあまた次に会う時、楽しみにしているよ。」 「はいっ!ありがとうございました。」 「城崎くんも、これからの活躍に期待しているよ。」 「ありがとうございます。失礼します。」 深くお辞儀をして駅へ向かった。 今回の出張はこれで終わり。 昨日の大口契約も城崎のおかげでうまくいったし、今日も問題なく契約を取り交わした。 城崎初出張の出来としては100点満点じゃないか? 「すごくいい人でしたね、吉野社長。」 「だろ〜?いつもつい甘えちゃうんだよな。」 「先輩の仕事への細かい気遣いとか、温厚な性格とか、そういうのがT社さんといい関係築けてる秘訣なんでしょうね。」 「きゅ、急に褒めんなよ!!」 上の立場に立ってから褒められることが減った俺は、褒められることに慣れていなくてなんとなくくすぐったかった。 名古屋駅で営業部のみんなへ土産を買い、予定していた新幹線に乗り込む。 時間も時間だから、車内は満席だった。 指定席に座り、ふぅっと脱力する。 城崎は間の肘掛けを退け、俺の頭を引き寄せた。 「俺にもたれかかってていいですよ。」 「変に思われるだろ…」 「肩貸すくらい大丈夫でしょ。」 それもそうか…、と思い城崎の言葉に甘えて、城崎の肩にもたれかかった。 出張が無事に終わった安心感から、俺は5分程度で夢の世界へと落ちていった。 「先輩、お疲れ様でした。」 こうして俺と城崎の出張は大成功で幕を閉じた。

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