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第121話

6月も後半、ジメジメと雨の毎日が続いていた。 食堂で飯を済ませれば良かったけど、無性にサンドイッチが食いたくてコンビニに行って部署に帰ってきた。 「あっつ…。ほんとジメジメする。梅雨嫌い。」 雨は嫌い。 ジメジメするし、おまけに6月後半にもなると暑さも加わってさらに気持ち悪い。 夏と停滞前線は一緒にしちゃ駄目だって。マジで。 まだエアコンの冷房が解禁されていなくて、窓を閉めれば暑いし、開ければジメジメする最悪の二択だ。 パタパタと団扇(うちわ)で煽いでいると、涼真も昼休みから戻ってきた。 「綾人、傘さしてなかったのか?」 少し濡れた俺を見て涼真が首を傾げた。 「ちょっとそこのコンビニ行くだけだから大丈夫かなって。」 「でもさ、おまえそれ…」 涼真に言われて視線を下に向ける。 あー………、やば。 濡れたシャツが胸にぴったりと張り付いていた。 乳首に貼った絆創膏が丸見えだ。 「何で絆創膏?綾人って陥没乳首じゃなかったっけ?」 「お、おい馬鹿!人前で言うな!!」 咄嗟(とっさ)に涼真の口を押さえる。 幸い誰にも聞かれていなかったようだ。 どうしよう。 「こんなの城崎に見られたら…」 「俺が何です?」 「うわぁっ?!」 いつの間に帰ってきたのか、後ろから城崎が現れた。 思わず涼真の後ろに隠れるが、その行動にムッとして腕を強引に引かれる。 慌てて鞄で前を隠し、城崎の前に立った。 「先輩、濡れてる。」 「う、うん。ちょっと走って…」 「ちゃんと傘さしてください。風邪ひいたらどうするんですか?」 城崎はポケットからハンカチを取り出して、俺の髪や肩を拭いた。 過保護すぎるけど、俺にだけこんなに甘やかしてくれるのは嫌いじゃない。 「次からは気をつける。」 「はい。そうしてください。」 反省した俺を見て、城崎は優しく頬を撫でた。 涼真は俺たちにバレないよう、こそこそとこの場から離れようとしている。 「ところで先輩。さっき、何話してたんですか?」 「えっ?!……えっとぉ、な、なんだっけ?大した話じゃないから忘れちゃったなぁ…?」 「じゃあ何で柳津さんはここから立ち去ろうとしてるんですかね?」 「!!」 涼真が逃げようとしてるのは城崎にバレていたようだ。 この下手くそ!! 身振り手振りで涼真に怒っていることを伝えたが、それが(あだ)となった。

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