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第123話

チクニーとは乳首オナニーの略だ。 そもそも何故そんなことを始めたかと言うと、勿論あの日の乳首責めが発端(ほったん)だ。 乳首を城崎の舌と玩具で散々(なぶ)られた俺は、あの感覚が忘れられずについついパソコンで検索した。 そしたら、男性でも乳首でオナニーする人はいるって言うじゃないか。 しかも、上手くいけばドライオーガズムもできるって書いてあった。 正直城崎の前であんなに乱れるのは恥ずかしかったし、一人であの快感が味わえるならやり得だと思い、俺はチクニーとやらに手を出してしまった。 自分の指で何度弄っても上手く乳首が出てこなくて、城崎があの日持ってきた乳首吸引器を使ったらソレは簡単に姿を現した。 いつも埋まってる俺の乳首は多分他人よりもずっと敏感で、指の腹で捏ねるだけでとても気持ち良かった。 服の上から擦ったり、摘んだり、爪を立てて抓ったり。 弄れば弄るほど敏感になっていって、俺は毎日夢中になって乳首を触った。 弄りすぎて腫れたこともあったけど、その日は我慢して温めたりして、一人で乳首弄りに勤しんだ。 その結果、他人より熟れたプックリ乳首が完成してしまったのだ。 「ねぇ、先輩。どうして?」 「…………」 「先輩の、陥没してるはずですよね?」 「…………」 チクニーしてたとは言えず無言を突き通すと、城崎は突然癇癪(かんしゃく)を起こした。 「俺にだけ出てきてくれる、あの先輩の可愛い乳首はどこにいったんですか?!」 「ば…っ?!おい!!」 「先輩の馬鹿!ビッチ乳首なんて見たくなかった!!」 バンッと扉を開き、城崎は背を向けてどこかへ行ってしまった。 えぇ…。俺はどうすればいいの? 「城崎っ……」 トイレを出て左右を見るが城崎の姿は見当たらない。 いつもだったら、絶対俺を放置なんてしない。 どこ行った…? まさか……、捨てられる? 「うっ……、グズッ……」 城崎に見捨てられたかもしれないと思うと、そこはかとない不安に駆られた。 ボロボロ涙が溢れてきて、自分でも止められなかった。 万が一にでも誰か来たら変に思われるだろうと、またトイレに逃げ込み個室の便座に座り込む。 「ゔ〜〜っ……」 声を押し殺してるつもりでも無理だった。 喧嘩なんかしたくない。 本当は城崎に抱きしめてほしい。 「城崎ぃ……、戻ってきて……」 目の前の快感を求めて城崎のことを考えていなかった浅ましい自分にひどく後悔した。 この乳首をまた陥没させれば、城崎は戻ってきてくれるだろうか? 「お願い…。戻って……。」 元に戻れと願いながら掌で胸を押さえる。 そんなことで元に戻るわけないなんて知ってるけど、焦った俺はこうやって神様に(すが)るしかなかった。 いくら待っても城崎は戻ってこなくて、俺を現実に引きずり戻したのは涼真からの着信だった。

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