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第124話

ポケットの中でバイブレーションが涼真からの着信を知らせ、俺は涙を拭いて電話に出る。 「……はい。」 『はい。じゃねーよ。いつまでサボってる気だよ?馬鹿二人そろそろ帰ってこい!』 「城崎は…?」 『は?一緒にいるんじゃねーの?』 てっきり城崎はもう戻ってると思っていた。 だって、ここにはいないし。 社内で他に行くところなんてない。 「涼真ぁ…、俺…、どうしたらいい……?」 『泣いてんの?どうした?』 「城崎に嫌われたぁ…っ」 言葉にするとまた涙が溢れてきた。 今までどれだけ醜態(しゅうたい)(さら)したって、城崎は俺のこと好きでいてくれたから。 最悪チクニーのことがバレたって、嫌われることはないとたかを(くく)っていたのも事実だ。 『とりあえず話聞いてやるから泣き止んで帰ってこい。』 「む、無理…。目腫れてるからっ…」 『じゃあどうすんの?仕事は?』 「城崎ぃ…、城崎に会いたいぃ……グスッ…」 『それは俺にはどうしようも………』 突然涼真の声が聞こえなくなった。 何故なら上からスマホを取られたから。 不思議に思って上を見上げると、個室と個室の敷居の上の空いた空間から呆れた顔の城崎が覗いていた。 「城崎っ……??」 「とりあえず鍵、開けてくれません?」 「う、うんっ。開ける!」 急いで鍵を開けると、城崎が入ってきて俺を力強く抱きしめた。 どうして隣の個室にいたのかも、さっきまで怒っていたのに何で抱きしめてくれるのかも、不思議なことはいっぱいだけど、今はただ安心したくて城崎の背に腕を回す。 俺が泣き止んだのを確認して、城崎はゆっくりと体を離した。 「城崎、何でここにいるの…?」 「逃げたフリして隣の個室に入ったから。先輩こそ一回廊下まで出たくせに、隣の個室閉まってるの気づかなかったんですか?」 「だって鍵閉まってるかまで普通見ないだろ!」 え。 ていうか、城崎ずっと隣にいたってこと? 「先輩、反省してるから許してあげます。」 「ほ、本当に?」 「はい。泣くほど俺のこと好きだって分かったんで、それだけでなんかすごく満たされました。」 城崎は俺の目尻にキスしては離れ、またキスしては離れを繰り返す。 でも真隣にいて俺が呼んでるのにすぐ来てくれないなんて…。 「性格悪ぃ。」 「あはは。ごめんなさい。先輩が可愛くて、つい。」 「俺本当に呆れて捨てられたかと思ったんだからな…。」 「捨てる?まさか。こんなに先輩のこと好きなのに捨てるわけないじゃないですか。」 「んぅ……」 ギュッと抱きしめられて、城崎の唇と俺の唇が重なった。

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