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第127話

スーパーに寄って食材を買い、珍しく料理を作った。 スマホで料理のサイトを見ながら、野菜の豚肉巻きとインゲンの胡麻和えを作り、あとは味噌汁とご飯の準備。 いい匂いが立ち込める頃、インターホンが鳴って、俺は相手を確認してロックを解除した。 「ただいま、先輩っ!」 「おかえり。お疲れ様、城崎。」 「いい匂いがする!」 勢いよくドアを開けたのは残業終わりの城崎。 俺は帰り際に城崎に「家で待ってる。」とメッセージを入れた。 急いで帰ってきたのか、うっすら汗をかいているようだ。 「風呂、沸かしてるけど先に入る?」 「え、これ俗に言うアレですか?」 「どれだよ。」 「ご飯にする?お風呂にする?それとも…」 「バーカ。風呂入ってこい。」 浮かれる城崎にスウェットを投げつけて洗面所に追いやった。 俺はキッチンに戻り、味噌汁を作る。 「言ってやればよかったか…?」 城崎が期待してた男が言われてみたい定番の台詞。 俺だって付き合っていた時とか想像したことの一回や二回はある。 なんかわざとらしいって分かってても、好きな人になら言ってもらいたかったりするもんだ。 「いや、でもな…。俺男だし……。」 冷静に考え直すと、好きでも男に言われたら気持ち悪いだろ。 あの台詞を言ってる自分を想像して気持ち悪くて鳥肌が立った。 城崎なら喜びそうだけど、俺が無理。 いろいろ考えていると炊飯器がご飯が炊けたことを知らせ、ハッと現実に戻った。 ご飯と味噌汁をよそって、おかずを皿に乗せてダイニングテーブルに並べる。 ちょうどタイミングよく、城崎が風呂から上がってリビングに現れた。 テーブルに並ぶ料理を見て目を輝かせる。 「わぁ!えっ?!これ先輩が作ったんですか?!」 「うん。美味いか分かんないけど。」 「いい匂い…♡絶対美味しいですよ。早く食べましょ!俺めちゃくちゃお腹空きました!」 久々に見る城崎のわんこモード。 尻尾ブンブン振って「よし」を待つ犬みたいだ。 城崎の向かい側に腰を掛ける。 「食べるか。」 「はい!いただきますっ♡」 城崎は手を合わせるなり、肉巻きを口に入れる。 幸せそうな顔で俺に微笑みかけた。 「めちゃくちゃ美味いです。」 「それはよかった。」 「俺今日頑張ってよかった…。」 俺も食べてみたけど、まぁ普通に上手くできてる。 城崎はご飯も2杯おかわりして、綺麗に完食した。

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