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第135話

「こら!弥彦!呼び捨てするなって言ってるでしょ!」 「えー、いいじゃん。な、綾人!」 「いいよ〜」 「ちょっと望月くん!甘やかさないで!」 弥彦くんを叱ってるのは母である久米(くめ)さんだ。 久米さんは俺の先輩であり、仕事も早いキャリアウーマンだ。 バツイチだけど女手ひとつで弥彦くんと鈴香ちゃんを育てているらしい。 家族同伴OKの納涼会だからこそ会える俺の天使。 「大きくなったな〜!今何歳?」 「6歳だぞ!もう小学生になったんだからな!」 「鈴香は4歳だよ〜」 「二人ともそんな大きくなったのかぁ。いやー、本当可愛いなぁ…。」 デレデレに照れまくる俺を、営業部のみんなは微笑ましく見つめていた。 これも営業部の恒例行事だったりする。 「望月〜、流しそうめん行くぞ。」 「「やったー!!」」 部長の呼びかけに反応したのは呼ばれた俺じゃなく、弥彦くんと鈴香ちゃんだ。 二人とも一目散に流しそうめん台に向かって走っていく。 二人を見守ってると、城崎が俺に声をかけた。 「先輩、子ども好きなんすね。」 「城崎は?嫌い?」 「嫌いじゃないっすけど……。何考えてるかわかんなくて苦手です……。」 あー、わかるわかる。 俺も最初は苦手だった。 けど実際、めちゃくちゃ可愛いんだよなぁ……。 「先輩、ニヤけてる。」 「えっ?!わ、マジか。」 「なんか嫉妬しちゃいますね…。」 「子ども相手に?」 「だって、俺の先輩が俺以外にデレデレしてたら、そりゃヤキモチの一つや二つ妬いちゃいますよ。」 いじけ顔の城崎。 可愛いから揶揄(からか)ってやりたいけど、ここはグッと(こら)えてご機嫌を取る。 「俺がドキドキするの、城崎だけだから。」 「っ!!」 ぼそっと耳元でそう伝えると、城崎は顔を真っ赤にして俺を見た。 「早く来いよ?向こうで待ってるから。」 赤くなった城崎を置いて、俺はみんなの待つそうめん台へと向かった。 到着すると、弥彦くんと鈴香ちゃんの間の席が空いていて、手招きされてそこへ座るよう促される。 誘いに甘えて間に座ると、二人ともキャッキャと喜んだ。 「遅れてすみません!!」 「あ、ちゅんちゅんだ。」 「ちゅんちゅん遅刻〜。」 城崎も席について始めるか〜って時に、雀田が到着した。 ちゅんちゅんとは雀田の愛称だ。 最初に言い出したのは涼真だったか、それがみんなに浸透した。 「そういえばいなかったですね。」 「城崎さん?!俺のこと忘れないでくださいよ!!」 「悪い、俺も忘れてた。」 「望月さん?!!」 俺と城崎がちゅんちゅんのことを忘れていたことにみんな大爆笑していた。 ちゅんちゅんも席につき、やっと流しそうめんが始まった。

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