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第137話

「どうしたの?」 「やっぱり綾人と遊ぶー!」 「えぇ?」 鈴香ちゃんに誘われるのは光栄だけど、割と疲れてしまった俺。 人目がなけりゃ城崎に甘えてしまうくらいには疲れてる。 「駄目…?」 「駄目じゃない駄目じゃない。何するの?」 「家族ごっこ!」 子どもの女の子らしい遊びに思わず顔が綻んだ。 周りにいるのは鈴香ちゃんと俺と城崎と久米さんとちゅんちゅんと…、あと何人か。 このメンツだと城崎が夫役に選ばれそうだな。 そんなこと思ってクスクス笑ってると、鈴香ちゃんは俺の腕に引っ付いた。 「鈴香がお嫁さんで、綾人が旦那さん!」 「えっ?俺??」 「うん!」 「そこのお兄さん、超イケメンだけどいいの?」 城崎を指差すと、鈴香ちゃんはふるふると首を横に振った。 城崎、許せ…。悪意はない。 まぁ当の本人は何も傷ついてなさそうだけど。 「なんで俺?」 「鈴香、将来綾人のお嫁さんになる!」 「えぇ…?」 「だからそれまで他の女の人と結婚しちゃダメだよ!」 鈴香ちゃんはぎゅっと俺の腕にしがみついた。 その様子を見て久米さんはケラケラ笑っている。 「鈴香が結婚できる年齢まで待ってたら、望月くん40歳超えてるわよ?」 「40歳だったらまだかっこいいもん!ストームの小野くんだってかっこいいもん!」 「まぁそうねぇ…。でも望月くんは優良物件だからすぐに売約済みになっちゃうわよ。」 「やだー!綾人は鈴香と結婚するのー!!ね!綾人、駄目だからね、他の女の人と結婚しちゃ嫌だからね!」 「はいはい、約束ね。」 「約束破ったら針千本飲ますからね!」 満面の笑みで俺に擦り寄る鈴香ちゃん。 超可愛い。 一方でぶすーっと不貞腐(ふてくさ)れた顔で隣に座る城崎。 こちらも負けじと超可愛い。 家族ごっこが終わって施設のトイレに向かうと、城崎も俺の隣について並んだ。 「先輩、さっきのはさすがに嫉妬しますけど。」 「ずっとしてんじゃん(笑)」 「約束までしちゃってさ…。子ども相手だからって俺の前であんなことしなくても……。」 「城崎、ちゃんと約束の内容聞いてた?」 「はい?」 話を聞いてないバカな城崎に教えてやる。 「鈴香ちゃんと約束したのは"他の女と結婚しない"ってこと。だから城崎と付き合うのは約束破ってないんじゃん?」 ヘヘッと笑うと、城崎は(かん)()えないような顔で俺を抱きしめた。

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