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第146話

家を出て片道2時間。 やっと目的地へ到着した。 「城崎、お疲れ様。」 「ありがとうございます。にしても、晴れててよかったですね。」 「ほんとにな。」 空は雲ひとつない青空だ。 絵の具で塗ったみたいに綺麗な水色。 城崎も俺に続き車を降りて、グッと伸びをした。 今日の城崎は白Tシャツに黒スキニー、あとはシルバーアクセっていう超シンプルなコーディネート。 高身長でイケメンだから、飾り気のない感じが逆に城崎の良さを引き立てている。 城崎は車の後ろへ行き、ゴソゴソと何かを取り出した。 「先輩、見て!ジャジャーン!」 「えっ」 「一眼レフ、買っちゃいました!」 城崎はトランクから立派な一眼レフを取り出して首に掛けた。 まだ使っていないのか、新品そのものだ。 「そんなん持ってたっけ?」 「今日のために買ったんですよ。ちゃんと写真家の友達に聞いて、一緒にいいの選んでもらったんですよ?ついでに撮り方も教わっちゃいました。」 医者やら写真家やら友達が専門職多いな。 というか、城崎がそんな暇…。 「もしかして…」 「そう!先週の日曜しか予定合わなかったんですよ…。先輩の誘い断って本当にごめんなさい。でもひまわり畑で先輩の写真撮りたかったんです…!」 城崎は申し訳なさそうに頭を下げた。 そっか、俺のために…。 俺じゃない誰かを優先したのかって一瞬思ったけど、城崎が今日のために頑張ってくれたのが純粋に嬉しかった。 「でも一眼レフって高いんじゃないのか?」 「まぁそれはご想像にお任せします。でも、これからたくさん先輩と思い出作れるじゃないですか!安いもんですよ。」 城崎はファインダー越しに俺を見つめる。 俺は恥ずかしくて顔を隠した。 せっかくいいカメラを買ったって、俺と景色だけ撮るなんて、そんなの城崎の自己満足じゃん。 「城崎。」 「わっ…、なに?」 「一緒に撮りたい。」 「……!!」 俺はスマホのカメラを起動してインカメで写真を撮った。 少し照れた俺と、驚いた顔の城崎。 「プフッ…!変な顔……」 「だって先輩が急に…!」 「俺だけ撮るのも好きにしたらいいけど、二人でも撮ってもらおうぜ。花畑なんだから、写真得意そうな人、多分いるだろ。」 「そうですね。俺は丸一日特訓受けただけのど素人(しろうと)なので。」 顔を見合わせてぷはっと笑った。 何だか今日はいい日になりそうだ。 俺たちは駐車場をあとにし、ひまわり畑の方へ向かった。

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