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第150話
お爺さんは「よいしょ。」と立ち上がり、自分のカメラを置いた方へ戻っていく。
俺と城崎もその後をついていった。
「何で分かったんですか…?俺たちが付き合ってるって…。」
「顔見りゃ分かるでしょうよ。なのに周りの若い子らは気付きもせずに声かけてきて、疲れただろう?」
「知ってたんですか?」
「私もさっきまで向こうで写真撮っていたんだけどね、あまりにも人が多いし、向日葵を大切にしない人もいたから気分が悪くてこっちに移動したんだ。」
お爺さんはそう言った。
たしかに、何本か踏み折られてる向日葵を見かけたな…。
「でもどうして?俺たちのこと気持ち悪くないんですか?」
「君達はお互いのこと好きなんだろ?じゃあそれでいいじゃないか。」
ずっと周りにバレちゃ駄目だと思ってた。
世の中は偏見で溢れてて、城崎がその犠牲になるのが嫌だったから。
城崎も同じように思ってくれてたと思う。
でもこうして、俺たちの恋愛を認めてくれる人達だっているんだ。
「ありがとうございます…。」
「礼を言われる道理はないよ。それにいい写真が撮れたしね。よかったらまた被写体になってくれるかい?」
「是非。」
お爺さんが差し出した名刺を城崎が食い気味に受け取る。
山上(ヤマガミ)さんっていうんだ。
「もう時間も時間だし帰るかな。君たちも気をつけて帰りなさいよ。」
「「ありがとうございました。」」
「結婚式には是非呼んでくれ。最高の写真を撮るよ。」
山上さんは機材を片付けて駐車場の方へ歩いていってしまった。
結婚式って…。
「いつかそんな日が来るのかな…。」
俺の呟きに城崎は珍しく無反応だった。
城崎は遠く見つめて、何か考え込んでいる。
「城崎…?」
「あっ、ごめんなさい。なんでした?」
「んーん、何でもない。帰ろうぜ。」
俺と城崎は駐車場の方へ向かう。
駐車場近くで城崎は俺に車のキーを渡した。
「先に戻っててください。」
「何で?」
「ちょっと用事です。」
トイレか?
俺はあまり気にせず駐車場へ戻り、助手席に乗り込んだ。
キーと一緒に預かった一眼レフを起動し、山上さんが撮ってくれた写真を確認する。
「うわ、すげぇ…。」
カメラについてる小さいモニターだから細かいところまでは見えにくいけど、俺と城崎が自然に笑ってる写真とか、見つめ合ってる写真とか、素敵な写真ばかりだ。
それにひまわり畑の下でキスしてる写真。
「照れるな、これ…。」
他人に見られていたってのがかなり恥ずかしいけど、絶対なくしたくないと思った。
俺と城崎の今日の思い出を切り取ったみたいで嬉しかった。
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