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第174話

小鳥の(さえず)りが朝を伝える。 隣に城崎の姿はない。 キッチンの方で音が聞こえるから、おそらく朝ごはんを作ってくれているんだと思う。 「昨日、激しかったな……。」 重怠い腰をさすりながらそう呟く。 ホテルのベッドでもなく、俺のベッドでもない、城崎の少し大きなベッド。 大きく深呼吸すると、城崎の匂いがする。 バレないように布団に潜り、枕に顔を埋めてスンスン匂いを嗅いでいると、布団をベリっと(まく)られた。 「おはようございます、先輩♡」 「お…はよ……。」 Tシャツにハーパンのラフな格好の城崎。 一方で下着一枚で布団の中で匂い嗅いでる俺。 いや、俺めちゃくちゃ変態じゃん…。 「なに可愛いことしてるんですか??」 「べ、別に何もしてねぇよ…!」 「ふふっ(笑)先輩可愛い♡」 「わぁっ…!」 枕を取り上げられて城崎に抱き寄せられる。 枕と違って硬いけど、さっきよりも城崎の匂いがして、くんくん嗅ぐ。 「城崎、いい匂い。」 「柔軟剤ですかね?あ、香水かな?」 「ん…。城崎の匂い、好き……。」 まだ眠くて、そのまま城崎に寄りかかって目を閉じる。 城崎は俺を抱きしめたまま、頭を優しく撫でた。 「ごはん、まだ食べないですか?」 「今……、何時?」 「8時過ぎです。」 城崎の腕には俺があげた腕時計。 嬉々(きき)としてそれを見せつけてくるから可愛い。 そんなに喜んでくれるなら本望だ。 「先輩、これ会社でもつけていい?」 「城崎が付けるなら、俺はプライベート用にするか。」 「俺は見せつけてもいいですけど。先輩が気になるならそうしましょう。俺は四六時中外す気ないですよ。」 「ふはっ…(笑)気に入りすぎだろ。」 「先輩からの誕生日プレゼントですもん。」 悩んでよかった。 それに、お揃いで買ったことも喜んでくれたし。 一緒のものをつけるのは、いかにも恋人っぽくて恥ずかしい。 でもそれ以上に、こいつは俺と付き合っているんだと嬉しくなる。 「先輩、これからもっとお揃い増やしましょうね。」 「いいのか…?」 「俺は嬉しいって言ったじゃないですか。さりげないおそろいしたいですよね。先輩、ピアスとか開けませんか?」 「怖い……けど、城崎が開けてくれるなら頑張る…。」 「なにそれ可愛い。ゾクゾクする。」 城崎は俺の耳を舐めたり、キスしたりしてくる。 ピアスか…。 人生で一度は開けてみたいと思ったことはある。 高校生くらいの時。怖くてやめたけど。 「でも営業だし、仕事に支障が出たらいけませんから、やっぱり我慢します。」 「城崎はピアス開いてるけどウケいいもんな。俺は今まで開いてなかったし、相手によっちゃ印象悪くなるしな…。」 ピアスは却下になったけど、早速今日、何か一緒に買いに行こうという話になった。 城崎が作ってくれた朝ごはんを食べ、昼前に少し離れたショッピングモールへ行くことにした。

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